最近はセキュリティに関する問題がよく取り上げられるようになり、企業にとってセキュリティリスクへの対策は重要なものになっています。また社外で働く機会が増えてきており、そういう意味でも、安心して社外からアクセスできるシステムの構築が必要不可欠になってきています。
「シンクライアント(Thin Client)」を導入すれば、どのような環境下でも安心してアクセスのできる社内ネットワーク環境が整います。さらにコスト面やメンテナンス面などからも、シンクライアントには大きなメリットがあります。
今回はそもそもシンクライアントとは何か、そしてそのメリットやデメリット、活用事例までを分かりやすくご紹介していきます。「シンクライアントとは何か知りたい」、「シンクライアントのメリットやデメリット、活用事例を知って導入検討などに役立てたい」という方はぜひご覧ください。
目次
シンクライアントとは
シンクライアントとは、直訳すると「薄いクライアント」となります。もう少し分かりやすく解説すると、「クライアントPC側の機能を最小限までに絞り(薄くし)、サーバー側で各処理を行うシステム構築方式」となります。
一般的な「サーバー・クライアント方式」ではクライアントPC側にも独自のストレージがあり、その中にOSやアプリケーションなどが保存されています。ですからサーバーに接続しなくても、PCだけでさまざまな作業が可能です。
その分各クライアントPCにはそれなりのスペックが求められ、PCごとに別途プログラムの更新作業などを行う手間がかかります。また各情報をPC内に保存できるので、最悪の場合外部にPCごと不正に持ち出されて機密が漏洩してしまうなどのセキュリティ面での危険性もあります。
シンクライアントでは、サーバーにネットワークリソースや処理を集約し、クライアントPCにはなるべく機能を割かない仕組みとなっています。ですからクライアントPCにはそこまでスペックが求められず、サーバー側でプログラムの更新などを簡単に管理できるようになります。
こういった特徴から、シンクライアントにはさまざまなメリットがあります。詳しい内容はこれから説明していきます。
シンクライアントのメリット
シンクライアントを業務で導入すると、次のようなメリットがあります。
・セキュリティ性が高い
・最適なリモート作業環境を構築できる
・ネットワークシステムの一元管理が可能になる
セキュリティ性が高い
シンクライアントでシステムを構築した場合、クライアントPCには基本ストレージが搭載されていません。保存しないといけないデータはネットワーク上のストレージに保存します。
ストレージがないので、そもそも情報をローカルで保存すると起こりがちな情報漏洩のリスクを大幅に削減できます。またデータ送受信方式自体もしっかり暗号化されているので、安心してサーバー側と通信が可能です。
このようにセキュリティ性が高いのが、シンクライアントの大きなメリットとなります。
最適なリモート作業環境を構築できる
最近では、社員が諸事情で自宅など社外で仕事をする機会が増えています。ですからどんな環境でも最適な状態で働けるシステム環境を作るのは、重要なポイントです。
シンクライアントでは基本サーバーに接続できるものであれば、どんな端末からでもアクセスしてサーバー内リソースを利用可能です。ですから外出先でも自宅でも、場所を選ばず仕事をこなせるようになります。
さらに先ほども言ったようにセキュリティ性が高いので、万が一PCを紛失したりしても情報漏洩の心配がありません。このように最適なリモート作業環境を構築できるのも、シンクライアントのメリットです。
ネットワークシステムの一元管理が可能になる
シンクライアントでは、サーバー側にあらゆるリソースが集約されています。ですからサーバーだけでリソースの一元管理が可能になります。
例えばサーバーでOSの更新作業などを行うだけで、社内全体のシステムアップデートが完了します。またトラブルがあった際もサーバーさえ見れば基本問題が解決するので、メンテナンス性にも優れています。
さらにサーバー側でリソースが一元管理されていると、クライアント側のPCが万が一故障してもすぐ別の機器でアクセスすればまったく同じ環境で作業ができるので、事業継続性の面でもメリットがあります。
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シンクライアントのデメリット
シンクライアントには、次のようなデメリットもあります。
・サーバーにかなりの処理負担がかかる
・ネットワーク環境によって作業遅延などが発生する可能性がある
サーバーにかなりの処理負担がかかる
サーバー・クライアント方式では、ある程度の処理はクライアントPCが代行します。その分サーバーの処理負担は和らぎます。
しかしシンクライアントの場合、あらゆる処理がサーバーに集中します。その分サーバーにかかる負担も大きくなるので、低スペックのサーバーではシステム構築は不可能です。
シンクライアントで自社システムネットワークを構築する際は、自社環境に応じて余裕のあるサーバーを用意する必要があります。
ネットワーク環境によって作業遅延などが発生する可能性がある
シンクライアント方式では、Webブラウザーのようにその都度リソースをネットワーク経由でサーバーから読み込む必要があります。この際のクライアントPCの応答速度は、ネットワーク環境に依存します。
例えばネットワーク方式が古い場合はその分遅延が起きやすくなり、マウス1つの操作だけでもそれなりの処理の遅れを感じるはずです。また作業中にネットワークが切れた場合はデータを送り直す必要性も出てきます。
このようにシンクライアント方式で自社システムネットワークを構築する際は、ネットワーク環境にも気を配る必要があります。
シンクライアントの活用事例
ここからは実際にシンクライアントがどう活用されているかを、事例としてご紹介していきます。
・銀行
・自治体
・教育
銀行
銀行業界は、シンクライアント導入が進んでいる業界の一つです。
ある銀行では、経済の先行き不透明感などから、将来的に生き残っていくために改革を断行。その中の一つに、シンクライアント導入によるサービス内容の刷新が挙げられています。
勘定系などのシステムをサーバー1台に統合して提供することで、スムーズなシステムアクセスとリソース利用が可能になりました。また職員に必要な端末数も削減されるなど、システム運用にかかるコスト削減も実現しました。
このようにシンクライアントを導入すれば、スムーズなシステム利用やコスト削減などが可能になります。
自治体
各住民の個人情報を扱う自治体では、システムのセキュリティ性確保は重要な項目です。
ある自治体ではモバイルシンクライアントを導入した結果、紙の書類を用いないデジタル会議が実現しました。また出先でも安心してPCを開いて、職員が作業できるようになりました。
このように利便性とセキュリティを兼ね備えたシステムネットワークの構築に、シンクライアントは打ってつけです。
教育
教育分野では、各生徒がPCを使い、動画などで授業を受けるというスタイルも増えています。しかしサーバークライアント方式で授業を行うと、PCの熱排出量の問題で空調代がかかったり、余計なソフトウェアインストールなどを生徒が実行してしまうなどの危険性があります。
ある学校法人では、シンクライアントシステムを導入しました。するとPCの総熱排出量が下がったことで空調代も抑えられ、生徒がPCで余計な操作を行ってしまいトラブルになるリスクも減少しました。
このようにシステムにかかるコストを下げ、クライアント側の操作をシンプルにできるのもシンクライアント方式の魅力です。
まとめ
今回はシンクライアントとは何か、そしてそのメリット・デメリットや活用事例などをご紹介しました。
シンクライアントで自社システムを構築すれば、どこからでもアクセスできる利便性と情報漏洩の心配がないセキュリティ性の高さを両立できます。またコスト削減など、他の面でもさまざまなメリットがあります。
ぜひあなたの会社でもシンクライアントを活用して、業務改革をしてみませんか?
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