定型的な業務を自動化し、企業にさまざまな利益をもたらす「RPA(Robotic Process Automation)」。日本では金融機関など、大手企業を中心にシェアが広がっていきました。ですから「RPAは大手企業のようなかなり大規模な業務が発生するところでしか活用できない」と、勘違いされている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし中小企業でもRPA活用は進んでおり、実際にRPAを導入して成功する中小企業のモデルケースも増えてきました。まだRPAを導入していない中小企業としては、RPAの効果などを事例とともに理解しておけば今後のビジネスの参考になります。
今回はRPAとは何か、そして中小企業での活用事例や導入・活用の際のポイントなどを解説していきます。「自社の業務効率化を図りたいが、RPAを導入するとどういう効果があるかまた導入・活用に当たってどんなポイントがあるか詳しく知りたい」という方は、ぜひご覧ください。
目次
中小企業でもRPAを導入すると効果がある
RPAとは、「ロボット(自動プログラム)により業務工程の自動化を行える技術」の総称です。現在日本発では「BizRobo?」など、市場の盛り上がりに合わせてさまざまなRPAツールが展開されています。
RPAは主に毎日のように発生する内容の決まった業務をプログラムで自動化し、
・業務効率化による業務時間、リソース配分の効率化
・人件費などのコスト削減
・処理自動化による業務品質の向上
・AIなど他技術と組み合わせてさらにさまざまな業務に活用する
などの効果を得ることができます。
大手企業に限らず、中小企業でも定型業務はたくさん発生しています。そして大手企業より、人手不足など労働上の問題が大きいのは中小企業です。
このような理由から、RPAは中小企業でも導入すれば十分効果が得られます。
関連ページ:RPAとは? その特性と期待できる効果とは?
関連ページ:RPAができることって何?
データから分かるRPAの普及率など
中小企業でもRPA導入が進んでいる現状は、すでにデータでも確認されています。
ICT市場を調査する「MM総研」では、「RPA国内利用動向調査(2019年1月調査)」としてRPA全体の市場規模などをデータ化しています。
それによると2019年1月時点のRPA導入率は、企業全体で前回調査より10%も上昇し32%となっています。そして導入率を企業規模に分けると、
・大企業・・・39%
・中小企業・・・27%
となっており、大手企業のほうが割合は高いものの中小企業でも十分導入が進んでいることが分かります。
59%が導入後効果を得られて満足としており、
・業務が今までよりも楽になった
・人手不足の対策として有効だった
・残業など社員負担の削減になった
こういった理由を挙げました。
今後はAIと組み合わせた高度なRPAの導入が進むとされており、導入済みと回答した79%の企業がRPA活用に積極的に取り組むと公言しています。
このようにRPAは企業規模を問わず導入されており、今後もその流れは加速していく可能性が高いです。
RPA導入で実際に成功している中小企業の事例3つ
ここからは、RPA導入で実際に成功している中小企業の事例を3つご紹介していきます。
・某電機メーカー
・某オフィス支援企業
・某商社
某電機メーカー
大阪にある某電機メーカーでは、思うように残業是正が進まず悩みを抱えていました。そこでまずは勤怠管理からスモールスタートする形で、RPAを導入しました。
すると勤怠管理が効率化され、総務の負担が一気に減少したのです。大きな効果を見込めると感じさらに複数の業務にRPAを適用させると、現在では月200時間以上業務時間を削減させることに成功しました。
このようにまずはRPAをスモールスタートさせて様子見すると、確実に導入を進められます。
某オフィス支援企業
オフィス環境整備のコンサルティングなどを行っている北海道の某オフィス支援企業では、オフィス用品の販売業務にRPAを導入しました。
この企業では、RPAのプログラム開発自体もベンダーに任せています。いずれはサポートを得ながら自社でもRPAサービスを提供できるように戦略を進めており、RPA活用に積極的です。
RPAをサポート面でも比較して選ぶと、この企業のようにスムーズにRPA導入を進めながら開発のスキルを身につけられるようになるかもしれません。
某商社
国内ECサイトで商品を仕入れ海外に売る手法で収益を得ている某商社では、一般的な定型業務ではなくあえて自社の主要な業務にRPAを活用しています。
この商社では仕入れのタイミングを見逃さずに、他社よりいち早く商品を仕入れられるかどうかが勝負になっています。そこで商品検索など仕入れに必要な作業をRPAに代行させていつでも有力な商品を発見、すぐメールで担当者に通知できるという体制を構築しました。
結果的に売上を約3倍にするなど、大きな収益向上につながりました。このように業務を細かく切り出して本当にRPAで効果が得られる業務を見つけられれば、大きな効果が見込めます。
関連ページ:RPA導入に適した部門はどこ? 適用の条件は?
中小企業がRPAを導入・活用するためのポイント
ここからは、中小企業がRPAを導入・活用するためのポイントを解説していきます。
・本当にRPAが最善の選択肢か考える
・自社の業務でRPAによる効率化が図れる部分があるかよく考える
・現場でしっかり使えるようにRPAへの体制を整える
本当にRPAが最善の選択肢か考える
RPA導入で成功するためには、まずは本当にRPAが最善の選択肢か考えましょう。
大きな効果が見込めるとはいえ、RPAを導入及び運用する際はそれなりのコストが掛かります。その際RPAツール同士でコスト比較を行うのも重要ですが、それ以上に「自社ではRPAを使わないと本当に業務効率化ができないのか」を考えなくてはいけません。
たとえば紙ベースで行っていた処理をパソコンで自動化するだけで、大きなコスト削減と業務効率化が狙えるはずです。また業務のアウトソーシングなど、他にも業務効率化のために取れる選択肢はあります。場合によっては他の手法のほうが業務効率化に直結する可能性もあるので、とりあえずRPAにすがろうという発想はよくありません。
RPAを導入する際はまず自社業務をできるだけ徹底効率化してみて限界を感じた上で、他の手法と比較して一番効果が見込めるとはっきりしてからにしましょう。
自社の業務でRPAによる効率化が図れる部分があるかよく考える
RPAを導入する際は、導入すると効果がある業務が果たしてあるかも考える必要があります。
たとえば極端な話、業務プロセスがあらゆる部分で長い企業はRPA活用に向いていません。RPAに長いプロセスを任せてしまうとイレギュラーな事態が発生したときにエラーが起きてしまい、その後の作業が滞ってしまう可能性が高くなるからです。
たとえば項目ごとの単純なデータ入力、書類のPDF化など、同じ作業が何度も発生して総合的にかなりの時間を取る業務でRPAを活用すると大きな業務効率化が図れます。
このように、自社の業務でRPA効果が出やすい箇所が本当にあるかよく確認するのも重要です。
現場でしっかり使えるようにRPAへの体制を整える
RPAは、導入後も注意すべき点がいくつかあります。
運用に失敗する企業でありがちなのが、「実際に現場でRPAが活用できず業務効率化につながらなかった」というケースです。これはヒアリングが中途半端で現場の声をRPA開発に活かせなかった、現場からRPA導入による反発がありいまいち活用へのモチベーションが高まらなかった、などが考えられます。
RPAを現場で活用する際は、まず現場の声をしっかりくみ取って開発に活かしましょう。現場が扱えるように、研修を行っていくのもポイントです。また経営陣レベルでRPA導入の意義や効果を詳しく説明し、後でトラブルが起こらないよう努めましょう。
関連ページ:RPA導入 何に気をつければいい?失敗を避けるためのノウハウを公開
まとめ
今回はRPAが中小企業にどんな効果をもたらすか、また導入・活用の際どういったポイントがあるのかなどを解説しました。
中小企業でもRPA導入により効果が得られることが、事例などからもお分かりいただけたと思います。導入・活用の際は導入して本当に効果があるか見極めながら、現場でしっかりRPAを使える環境を構築していきましょう。
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