海外から普及が始まったデジタルレイバー、「RPA(ロボットプログラムによる業務プロセス自動化)」ツールは日本でもシェアが広がっており、今ではビジネスでRPAという単語が頻繁に聞かれるようになっています。
RPAは業務規模にかかわらず、さまざまな業種で利用が進んでいます。これから利用を検討している方はRPAの市場がどうなっているか、そしてそこからどんなことが見えてくるかを理解すると参考になるでしょう。
今回は世界と国内のRPA市場、そしてそこから見えてくるRPAの将来性を解説していきます。
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目次
世界のRPA市場
アイルランドに本拠のある多国籍コンサルティング企業「アクセンチュア」では、グローバルのRPAの市場規模グラフを発表しています。
それによると2016年度には2億7,100万ドルだったRPA市場規模が、5年後の2021年度には12億2,400万ドルと約4.5倍の成長を見せることが分かります。成長率は2017年度の63%から2021年度には20%と落ちては行きますが、年の平均成長率は35%と高めになっています。
世界、特にアメリカではさまざまな文化的な背景を持つ人々が効率的に仕事に取り組めるよう、トップダウン方式で業務を整理しプロセスを分ける体制ができあがっています。つまりRPA導入前の準備がすでに整っている状態であり、さらなる業務効率化を目指すなどの目的でスムーズにRPA導入が進められています。
国内のRPA市場
次に、国内のRPA市場を全体と中小企業に分けて解説していきます。
国内RPA市場全体
「株式会社矢野経済研究所」は、2018年10~12月にかけてRPA関連の事業者や団体を対象にして調査を実施、2019年2月に国内RPAの市場規模をデータ化して発表しました。
それによると2016年度には約85億円だったRPA市場規模が、5年後の2021年度には約741億円にまで伸びると予測されています。5年で約8.7倍と、非常に成長率が高いことが伺えます。
現場主義型の日本企業ではプロセスが可視化されて管理されていないケースも多く、RPA導入に関してはまず事前にプロセスを可視化しどんな箇所に問題があるかを洗い出す準備を行う必要があります。
そのためRPA導入に関しては世界のようにスムーズに進まないのが現状ですが、日本では人手不足が大きな問題となり経営者を悩ませています。また働き方改革により、残業是正なども急務です。
ですから日本でも人手不足解消や働き方改革実行のために、RPAを利用して業務効率化を目指す企業が増加中です。大手金融機関でのRPA導入成功をきっかけに火がつき、今では中小企業もRPA導入に積極的になりつつあります。
また導入事例や日本語に対応する海外RPAも増えており、国内発のRPAメーカーも登場しています。そういった状況からRPAツール内で価格競争が進み、将来的には今よりさらにRPAツール導入コストが下がっていくだろうと分析されています。
さらにRPAツール普及に伴いRPAを活用するためのコンサルティングサービスといった関連サービスもシェアを伸ばしており、伸び率では将来的にRPAツールに対してRPAの関連サービスのほうが高くなっていくという予想も行われています。
中小企業RPA市場
IT市場を調査している「ノークリサーチ」では、年商500億円未満の中堅・中小企業に対して調査を行いRPAツールのシェアなどを2019年12月に発表しています。その中では年商5〜50億円と年商が低いグループを対象に、RPA導入状況の調査も行われています。
それによると特に年商10億円〜50億円の企業では、2018年度よりRPA導入済みと回答している企業が減少しているのが分かります。
ノークリサーチによると年商10億円〜50億円の企業はIT関連部門ではなく現場手動でRPA導入・活用ができると見込んでいたが、結局上手く行かずRPA利用継続につながらなかったのではないかと分析しています。
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市場から見えるRPA将来性に関するポイント
ここからは、市場から見えるRPA将来性に関するポイントをご紹介していきます。
・世界的に市場が成熟し、RPAツールに限らないサービスが登場していく
・定型的な作業を行っている従業員は将来をよく見据えておくこと
・中小企業はRPAを扱えるリソースを確保しておく
世界的に市場が成熟し、RPAツールに限らないサービスが登場していく
RPAは世界的に見ると将来的に成長率が落ち着き、成熟していく状態です。これは日本でも同じで、世界に対しては遅れるでしょうが市場成熟は確実に起こるでしょう。
市場が成熟するとRPAツールの選択肢が多様になり、現在よりさらに企業が自社に最適なRPAツールを導入しやすくなっていくはずです。ただし「コモディティ化(商品やサービスがあふれ、差別化できなくなっている状態)」によりRPAツール同士の違いが分かりにくくなり、選定にはRPAに対する基本知識がさらに必要になってくるでしょう。
またRPAメーカーがコモディティ化を嫌い、「バーティカル(特定の業種に特化した)」なRPAツールを発売するようになっていく可能性もあります。企業としては「ホリゾンタル」(どんな業種でも扱える)」なRPAツールか、バーティカルなRPAツールかも含めて、どんなRPAツールを導入するか決めないといけないようになるかもしれません。
さらにRPAツールに限らずコンサルティングなどの関連サービスが充実していくので、「社内でRPAツールのスキルが足りない」などの場合には関連サービスも利用しながら上手くRPAツールが業務で循環できる体制を整えていく必要がありそうです。
定型的な作業を行っている従業員は将来をよく見据えておくこと
RPAツールは定型業務を自動化し、業務効率化が達成できる有効なツールです。しかし定型業務がなくなるので、定型業務だけに従事していた方は職を失う可能性もあります。
「RPAは人の仕事を奪わない」という声もありますが、定型業務を中心に今まで人の手で行われていた業務が減少していくのは事実です。ですから定型的な作業を行っている方は、将来をよく見据えておく必要があります。
たとえばよりアイデアの創出などが求められる業務に積極的に参加したり、RPAツールを上手く扱えるスキルを獲得して指導要員としての地位を確実しておくなど、定型業務に限らない業務ができるようにしておくと安心です。
また経営側も将来RPAツールを導入した後社員をどう配置するか、各作業をどうRPAに割り振って業務体制を安定させていくかをよく考え、従業員に配慮したRPA活用を進められるよう準備をしておく必要があります。
中小企業はRPAを扱えるリソースを確保しておく
年商の低い中小企業では、RPAを無理に現場手動で導入・活用しようとして失敗しているケースが見受けられます。このため事業規模にかかわらず、RPAを扱えるリソースを確保し専用の部門を構築しておく必要があると言えます。
RPAは誰でも扱えますが、それは誰でも活用して業務効率化が可能という意味ではありません。万が一トラブルでRPAツールが稼動しなくなったなどの事態に備えるためにも、IT部門などと連携して現場で活用を進める必要があります。
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まとめ
今回は市場を見ながら、RPAの将来性について解説しました。
RPAは高い成長傾向にあり、将来性は十分です。将来的にはRPAツールが成熟し、RPAツールに関連したさまざまなサービスが登場するでしょう。ただしRPAツール導入に関しては定型業務が自動化されていく状況を踏まえながら、従業員経営陣双方にどんな業務が残っていくか考えていく必要がありそうです。
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