現在「RPA(ロボットソフトウェアにより、業務プロセスを自動化する技術)」はトレンドとなっており、各企業から注目が集まっています。そのような状況で、RPAに関係するさまざまなニュースも話題になりました。
企業としてはニュースからRPA業界がどうなっているか理解することで、RPA導入時などに参考にできます。
今回はニュースを絡めながら、RPA業界で今後何がポイントになっていくのかを解説していきます。
目次
RPA市場は順調に成長している
RPA市場は、データからも順調な成長が覗えます。
ITに関するデータ調査などを取り扱っている「矢野経済研究所」では、2018年10月~12月のデータをもとにした国内のRPA市場グラフを発表しています。
それによると2017年度には約178億円だった市場規模が、5年後の2022年度には約802億円と約4.5倍まで成長を見せると予測されています。
同調査によると2018年上半期は政府の働き方改革に関して、RPAの導入事例が多数発信されています。そして「RPAは働き方改革を実現する有力なツール」というイメージで認知度が高まり、市場の伸びを後押ししたとされています。
今後はRPAツールが定着するにつれてより深いRPAの活用が研究されるようになり、活用に関するサポートを行うサービスのシェアも拡大されていくとみられています。
海外から導入が始まったRPAツールですが、日本でも確実に導入企業が増えています。将来的にはRPAを使っていなかった企業も、RPA導入を検討する場面が増えていくことと思われます。
関連ページ:RPAとは? その特性と期待できる効果とは?
RPAが幻滅期に入る
市場としては順調に伸びを見せているRPAですが、同時にこれから幻滅期に入ると予測しているところもあります。
ITコンサルティングなどを行う「ガートナージャパン株式会社」は、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2019年」を発表しています。
ハイプ・サイクルとは横軸を「時間の経過」、縦軸を「市場からの期待度」としたガートナー独自の市場の傾向を示すグラフです。
ハイプサイクルでは時間の経過に応じてテクノロジーが
・黎明期
↓
・過度な期待のピーク期
↓
・幻滅期
↓
・啓蒙活動期
↓
・生産性の安定期
をたどるとしており、それぞれのテクノロジーが今どの段階にあるかを曲線内に点で示しています。
ハイプ・サイクルを見ると現在テクノロジーがどの段階にあるか、そして自社ではどのタイミングでテクノロジーを導入すればよいのか判断ができます。
2018年度のハイプ・サイクルでは、RPAは過度な期待のピーク期の終わりに差し掛かろうとしていました。そして2019年度は、すでに幻滅期の初段階あたりに差し掛かっているのが分かります。
ちなみに「AI」や「IoT」もRPAと同じで、2018年度には過度な期待のピーク期前後にいましたが2019年度には完全に幻滅期の初段階に位置しています。
RPAは導入企業がどんどん増え、モデルケースが増えていきました。その中で導入に成功する企業と失敗する企業が同時に増えてきており、「現実的にRPAにはどのような弱点があり、どのように解決して上手く活用していくか」を現実的に考えていく時期に差し掛かっています。
今後は単なる期待ではなく冷静な判断からRPAを見極め、確実に導入していく企業が増えていくと見られます。そして最終的にトレンドではなく、AIやIoTなどとともにビジネスで一般的に長く使われるテクノロジーとして定着していくでしょう。
今後各業界がRPAを導入する際は成功・失敗事例も参考に冷静にRPA効果を分析し、本当に業務効率化が可能であるか多角的に判断する力が求められそうです。
関連ページ:万能ツールではない!RPA導入失敗事例から教訓を学ぼう
RPAの選択肢が広がる
さまざまなRPAツールが開発・発売されていく中、業界が導入できるRPA自体の選択肢も広がっています。
RPAツールベンダーである「Automation Anywhere」は、「RPA as a Service(RaaS)」の提供を開始しました。
RaaSでは従来のRPAツールのようにわざわざサーバーやパソコンにRPAソフトウェアをインストールする必要がなく、Webブラウザー上からクラウドサーバーへ接続してRPAを操作できるようになります。これによりRPA構築前の準備の手間も省け、どんな端末でもクラウド経由でロボットプログラムを開発できるようになります。
「自社ではパソコンの搭載OSが統一されていない」などのイレギュラーな状態でも安心して開発ができる、オンプレミス型のRPAツールよりコストを抑えやすいなどのメリットから、従来RPAツール導入に足踏みしていた企業でも導入が進みそうです。
また国内発のRPAベンダー「RPAホールディングス株式会社」では、自社提供RPAツール「BizRobo!」のバージョンアップを2019年6月に行っています。
新しいバージョンアップではBizRobo!のユーザビリティ向上に重きが置かれ、従来ロボット開発に必要だった端末数を2台から1台にまとめました。自動化したいパソコンで直接ロボットプログラム開発が可能になったことで、開発スピードも上がりコスト削減もしやすくなりました。
他にもステップ追加ごとに自動で動作を実行して挙動を確かめる機能追加など、開発効率を上げる取組が行われています。
各RPAメーカーの取り組みにより、オンプレミスに捉われず開発スピードも向上した洗練されたRPAツールが続々登場しています。将来的にはコスト、開発のしやすさなどさまざまな観点から、自社の希望に極めて近いRPAツールを探せるようになっていくでしょう。
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RPAがAIにより高機能化する
現在ではRPAを単体で使うのではなく、AIと組み合わせ高機能化しようとする取組も進んでいます。
カリフォルニアに本拠を置く「コファックス」は、RPAツールに自然言語処理機能を組み込むことを発表しています。また「ブループリズム」の日本法人では外部AIサービスとRPAツールを簡単に連携できるツール、「Blue Prism Digital Exchange(DX)」を発表しています。
AIはさまざまなテクノロジーとの組み合わせが進んでいますが、RPAツールとも相性がよいです。RPAツールがAIで自己判断できるようになれば業務プロセスの自動最適化や、問題個所の自発的提案などが可能になります。将来的には定型業務だけでなく、より踏み込んだ複雑な業務にまでRPAツールが浸透していく可能性があります。
ただし企業がAIを活用するには知識やスキルがいるので、今後AI×RPAのサービスを導入する際は社内にAIやRPA含めIT全般に詳しいリソースを用意しておくと安心です。
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有名企業がRPAに新規参入する
従来RPAに関与してこなかったIT企業が、RPA業界に新規参入する事例も出ています。
2019年11月、「Microsoft」は「Microsoft Ignite 2019」イベント内でRPAツール「Power Automate」のプレゼンを行いました。
ユーザー操作の自動記録、「Microsoft Office」など他システムとの連携など、RPAとして必要な機能を一通り揃えています。どんなソフトも自動化可能で、プログラミング技術がなくても開発できる手軽さなどが売りです。
新興系の企業が多い中、MicrosoftがRPA業界に参入するというニュースは大きな反響を呼びました。今後は新興と大企業が競争し、よりRPAツールの多様化が進んでいく可能性があります。
まとめ
今回は各ニュースから見る、RPA業界の今後のポイントをご紹介しました。
RPA市場は成長しており、今後は幻滅期を終えた後現実的な普及段階に入っていくでしょう。またクラウドタイプやAI搭載など、多種多様なRPAにより企業が導入できるRPAツールの幅が広がっていく可能性があります。
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