働き方改革を行うには、ITの力が必要不可欠です。社会全体で働き方改革を進めるためにも、まずは働き方改革推進の中核となるIT業界を変えていく必要があります。
今回は働き方改革で悩んでいるIT業界の方へ向けて、IT業界の働き方改革の現状や長時間労働が起こる理由、そして改革を行うためのポイントなどを解説していきます。
目次
IT業界の働き方の現状
近年日本全体でも働き方改革が叫ばれ、政府が対策を行っています。
たとえば
・労働基準法第36条(36協定)を締結していても、残業時間は1週間15時間までなど規制を入れる
・努力義務として「勤務間インターバル制度」が開始され、従業員の就業時間と始業時間を調整するよう各企業に呼び掛ける
・有給休暇の取得日数が10日以上ある労働者に対し、会社は毎年5日間以上有給休暇を付与する必要がある
などが、2019年4月から施行された「働き方改革関連法案」で決定しました。
従来の働き方では、36協定を締結した後の残業時間の制限は特に設けられていませんでした。長時間労働につながりがちな状況にてこ入れができたのは、大きい成果です。
またインターバルを設けて就業時間と次の日の始業時間の間に余裕を持たせたり、有給休暇を必ず消化するよう規則づけたりするなど労働者に寄り添うような変更がなされています。
以前よりも、働き方改革を進めやすい状況になったのは確かです。しかしIT業界では、まだ働き方改革が進んでいるとは言えません。
他の業界よりもIT業界は長時間労働などにつながりやすく、仕事がブラック化しやすい傾向にあるからです。
厚生労働省ではIT業界に対して別途呼びかけを行い、IT業界は心身に関する異常に対して労災補償の支給決定数が多いこと、そして長時間労働が問題になっていることを説明し、労働状況の調査結果公表やセミナーなどさまざまなサポートを行っています。
関連ページ:【人間中心の社会】ソサエティ5.0で実現する新しい働き方とは
IT業界で長時間労働が起こってしまう理由
IT業界で長時間労働が起こってしまう理由には、次のようなものがあります。
・根本的にリソースが足りていない
・社員同士の認識が違う
・業務が効率化されていない
根本的にリソースが足りていない
IT産業は、今や社会全体にとって必要になっています。私たちは毎日のようにパソコンやスマホを触りますし、仕事ではWebサービスや業務システムなどを頻繁に使うのが普通です。
また最近では「IoT」や「AI」などが社会に浸透しつつあり、最先端のITとして注目を集めています。
しかしこういった状況にもかかわらず、ITに関する人材は不足し続けています。
ITに長年付きまとっているブラックなイメージから、IT業界に求職を申し込む方の数は伸び悩んでいます。それに対してIT産業は大きく伸張していますから、必要なリソースは段々と増えています。
結果的にITにかかわる仕事を少数の人間が受け持つ状態になりやすく、長時間労働になってしまう傾向にあるのです。
特にIoTやAIなど最先端のIT人材は、今から育成していく必要があります。最先端ITに関して詳しいリソースは重要視されるでしょうが、社内で扱える人員が少ないとそれだけ一部の人員の負担が大きくなる可能性があります。
社員同士の認識が違う
社員同士の認識が違うことも、長時間労働が発生する原因の一つとなっています。
たとえばプロジェクトの管理者がリソースや納期など複数の項目を考えながら計画を立てられなければ、作業担当者に大きな負担が掛かってしまう状況に陥りかねません。担当者が「このくらいの納期でできるだろう」と思っていても、実際の作業者はもう少し時間が欲しいときもあります。
また営業担当が仕事を新しく作る際も、現場との認識の違いが起こることがあります。納期が極端に短い仕事などを無理に受け持つと、現場のリソースにはかなり負担が掛かります。
このようにITにかかわる担当者間の認識が違うままだと、長時間労働などが発生しやすくなります。
業務が効率化されていない
IT業界と聞くと最先端の技術を使って業務を効率化しているというイメージがあるかもしれませんが、実際は業務が効率化されていない職場も多いです。
IT業界でも他業界と同じように、組織内でグループが縦割り化され属人化しているところがあります。属人化していると外部の人間からは作業プロセスが分かりにくくなり、業務可視化の障害になります。
業務が可視化できていないと、業務に貢献しないプロセスを毎日のように行ってしまう可能性が高くなります。無駄が多い状態で仕事を続けても収益向上は見込めませんし、労働時間も伸びてしまいます。
関連ページ:業務効率化の推進が招く働き方改革の失敗事例
IT業界を変える、働き方改革のポイントとは
ここからはIT業界を変える、働き方改革で押さえておきたいポイントをご紹介していきます。
・会社に対するイメージを向上させ、スキル向上のサポートも行う
・社内全体で話し合える環境を構築し、認識の違いをなくす
・ツールの利用などで業務効率化を行う
会社に対するイメージを向上させ、スキル向上のサポートも行う
IT業界は他業界より、ブラックだとして厳しく見られやすいです。企業がIT人材を上手く採用するには、まず会社に対するイメージを向上させることが重要です。
働き方改革に対して積極的な姿勢を採用に関する資料などでアピールできれば、働きやすい職場として就職申込数も増えやすくなるでしょう。
また社内リソースのスキル向上に努めるのもポイントになります。
IT業界では、従業員間でスキルが異なるケースも多いです。お互いに連携しながらスムーズに仕事をするためには、ある程度スキルを近い状態にしておく必要があります。
自社研修や外部セミナーなどを上手く活用しながら従業員のスキルを上げれば、将来的に収益向上にもつながります。
社内全体で話し合える環境を構築し、認識の違いをなくす
組織全体で仕事を協力して行う企業が増えている今、縦割りのまま仕事をしても成果は出ません。社内全体で話し合える環境を構築し、従業員間の認識の違いをなくしながら仕事を適正化していきましょう。
定期的に部門を跨いだミーティングを行い、課題について意見を出し合えば情報共有もしやすくなります。お互いの部門についてよく知っておけば、現在の仕事の負担も考えながら上手く仕事を調整しやすくなります。
ツールの利用などで業務効率化を行う
長時間労働をなくすためには、ツールの利用などで業務効率化を進めていくのも重要です。
たとえば業務を誰にでも見える化するためには、業務可視化ツールが有効です。業務可視化ツールでは各従業員の業務プロセスを、部門間のつながりなども含めて可視化できます。
結果的に手が空いている従業員に新しく仕事を任せたり、負担の掛かっている従業員の仕事を減らしたりといった仕事適正化も楽になります。また無駄なプロセスを削除したり、プロセスを変更してより成果が出るようにしたりといった作業も簡単にできます。
関連ページ:RPAが実現する働き方改革とは?
まとめ
今回はIT業界の働き方の現状、そして長時間労働が起こってしまう原因や解決に関するポイントなどを解説しました。
政府でも働き方改革を推進しており、長時間労働是正に対して各企業も動いています。特にビジネスで将来大きな役割を担っていくIT業界では、ブラックなイメージを払拭し働き方改革を強く推し進めていく必要があります。
働き方改革のポイントを押さえて、無理なく働ける環境を作ってください。
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