現在働き方改革の一つとして、リモートワークが話題になっています。そしてイレギュラーな「コロナウイルス」の感染拡大により、リモートワークの注目度はさらに上がりました。
リモートワークは活用すれば多様な働き方の実現などに大きな効果があります。しかし闇雲に導入してしまうと、さまざまなトラブルを引き起こす可能性もあるので注意しましょう。
今回はリモートワークを導入しようとしている企業向けにリモートワークにおける課題、そして対策方法などをご紹介していきます。
目次
データから見えるリモートワークの課題
書類電子化クラウドサービスなどを提供している「ペーパーロジック」では、東京在住の100人以上のリモートワーカーを対象にリモートワークのアンケートを実施しました。
それによると、コロナウイルスの影響によりリモートワークを推奨されたという回答が86%以上に上っています。
しかし同時に、
・対面で仕事をするよりコミュニケーションが取りにくい
・ハンコを押したりと、リモートワークがしにくい作業もある
・インターネットやパソコンの環境が整っておらず、不便
などの課題も浮き彫りになっています。
こういった課題に関するデータを収集して情報分析すれば、今後リモートワーク課題に関する対策を行う上で参考になるでしょう。
実際に考えられるリモートワークトラブル事例
ここからは、実際にリモートワークを実行する上でのトラブル事例をご紹介していきます。
・アルバイトが社内に入れず、ツールエラーがなどの事態が発生
・就業規則が整っておらず、労働基準法違反などが発生する
・ツールを活用しておらず、返って効率よくリモートワークができない
アルバイトが社内に入れず、ツールエラーがなどの事態が発生
SNS系の仕事マッチングサービスなどを展開するある企業では、コロナウイルスを受けてアルバイト・パートなど雇用形態にかかわらず、全社員がリモートワークを実施しました。
オンライン会議用ツールなどをすでに準備しており、おおむね作業状況に問題はありませんでした。
しかしパソコンを取りに来たあるアルバイトワーカーが、鍵を開けられず社内に入れないトラブルが発生しました。このアルバイトワーカーは開錠に必要なカードキーを持っておらず、他の社員が来るまでそのままオフィス外で待機していなくてはいけませんでした。
またオンライン会議用ツールを使用している際、COOの顔映像が途切れグリーンになったまま何も見えなくなるトラブルなども発生しています。
このようにあらかじめリモートワーク体制を整えていたところでも、失敗は発生します。
就業規則が整っておらず、労働基準法違反などが発生する
就業規則の内容は、法律である程度定められています。当然リモートワークを行う場合も、就業形態の一つとして就業規則を策定しなくてはいけません。
社内で働く通常の就業形態と、リモートワーカーの就業形態がいっしょであれば、通常の就業規則をリモートワーカーの就業規則に当てはめるだけで済みます。しかし実際には、
・労働時間
・労働日
・勤務地(自宅か、サテライトオフィスかなど)
など、さまざまな面でリモートワーカーは通常の勤務者と就業形態が異なってきます。
また
・パソコンは会社で支給するか、自宅のものを使ってもらうか
・通信費は誰が負担するか
・その他消耗品等の支払いはどうするか
など、経理面でさまざまな問題が出てくるのもネックです。
もしプライベートで使っているものをリモートワークで使う場合、「按分」を計算する必要が出てきます。
たとえば同じ回線で
プライベートの通信時間:リモートワークの通信時間=3:7
となっている場合は時間で按分計算を行い、通信費の10分の7を会社が負担するなどの決まりを作らなければいけません。
就業規則を作っておかないと社員とトラブルを起こすもとになるだけでなく、法律違反になる恐れもあります。十分注意しましょう。
ツールを活用しておらず、返って効率よくリモートワークができない
リモートワークを確実に実行するためには、
・仕事上のコミュニケーションを取るチャットツール
・顔を合わせているように会議ができるWeb会議ツール
・社員の業務状況をグラフなどで可視化できる業務管理ツール
など複数のツール導入が必要です。
しかし特に中小企業において、ツールを上手く用意できずリモートワークが非効率になっている事例が頻発しています。
ツールを活用できず社員のスケジュールや仕事進捗状況を管理できないと、仕事内容に食い違いが出て来たり余分に働かせて長時間労働につながってしまう可能性などがあります。
「周りの企業が導入しているから、自社もすぐリモートワークを導入しよう」と思うのではなく、ツールの用意など重要な準備を整えてから安心してリモートワークができるようにすることが重要です。
リモートワークのトラブルを防ぐためのポイント
ここからは、リモートワークで起こるトラブルを防ぐためのポイントをご紹介していきます。
・緊急時にも、リモートワークでトラブルが起きない体制を整える
・法律にも準拠した、細かい作りの就業規則を用意する
・業務可視化ツールなど、必要な各ITツールを導入する
緊急時にも、リモートワークでトラブルが起きない体制を整える
リモートワークをすでに導入している企業も多いですが、緊急時にリモートワークを広めた際ノウハウがあっても問題が頻発する可能性があるはずです。通常の勤務状態でもリモートワークが機能するように準備するのは当たり前ですが、緊急時にもリモートワークが問題なく機能するよう準備を怠らないのもポイントです。
・各ツールに問題が発生した際、どのように対処すればよいのかあらかじめ周知する
・アルバイト、パートなどでも、緊急時は中に入れるよう限定的にキーの発行をする
などの対策が考えられます。
法律にも準拠した、細かい作りの就業規則を用意する
リモートワークの就業規則に対しても、通常の就業規則と同じような細かい作りが求められます。
就業時間や就業日などはある程度決め打ちできると思いますが、自宅の設備をリモートワーカーに使わせる場合は按分計算が面倒くさくなります。パソコンや通信設備などをなるべく自社から支給できる形にすれば、按分計算の必要はなく提供設備の利用状況に応じて簡単に費用計算が可能です。
自社で用意する形が難しい水道光熱費などはリモートワーク期間中は全額会社が負担するなど、トラブルが起こらないよう決まりを作っておきましょう。
業務可視化ツールなど、必要な各ITツールを導入する
リモートワークの成功には、ツールの選定が必要不可欠です。昔は「オンプレミス(自社でサーバーやソフトを用意する方式)」が一般的でコストが掛かりましたが、今では「クラウド(企業が用意してくれたサーバー内のソフトを利用する方式)」タイプのサービスも増えています。
クラウドサービスを活用すれば、中小企業でもコストを抑えて簡単にリモートワークを実施可能です。
ツールを利用する場合は、ITサービスに不慣れな初心者でも扱えるよう事前に研修をしたり、操作が簡単なサービスを選ぶなどの対策も必要でしょう。また個人情報などが漏洩しないよう、セキュリティ機能が充実しているツールを導入するのもポイントです。
まとめ
今回はリモートワークで発生する可能性のあるトラブル事例、そしてトラブルを起こさないようにするポイントを解説しました。
リモートワークには緊急時にも業務を止めないでよいなどのメリットがありますが、同時にツールを活用できないと非効率になるなどのデメリットも抱えています。実際の企業事例も参考にしながら失敗しない対策を行えば、安心してリモートワーカーを増やせます。