新型コロナウイルスにより、今まで思ったようにシェアが伸びていなかった「リモートワーク(社内に勤務するのではなく、遠隔で仕事を行うこと)」の注目度が高まっています。今まで導入を積極的に進めてきた大企業だけでなく消極的なところも多かった中小企業も、リモートワーク実現の必要性に迫られている最中です。
さまざまなITツールがリモートワーク導入に踏み切った企業に提供されている中、「VR(仮想現実)」や「AR(拡張現実)」を利用したサービスもシェアを伸ばしつつあります。VRやARはゲームなどエンターテイメント分野での導入が目立っていますが、リモートワークに導入することにも大きなメリットがあります。
今回はリモートワークを検討している企業向けに、VR・ARをリモートワークで活用するメリットや注意点、そして実際の導入事例などをご紹介します。
目次
リモートワークでVR・ARを活用するメリット
リモートワークにVR・ARを活用すると、次のようなメリットが受けられます。
・会社にいなくても遠隔でコミュニケーションが取れる
・単にWeb会議ツールなどを使うより、リアルに近いコミュニケーションが可能
・よりビジュアルを考えた表現ができる
会社にいなくても遠隔でコミュニケーションが取れる
「会社に行き、同僚と話しながら仕事をする仕事形態が当たり前」という考えは、古くなりつつあります。仕事の形態が出社してオフィスで業務を行うだけだと、
・直接出社できない人を採用できない
・介護などの理由で出社が難しくなったリソースを、引き止められない
・台風や津波など災害で会社がダメージを受けたとき、事業を継続できない
などのデメリットがあります。
VR・ARを活用したリモートワークツールを駆使してリモートワークができるようになれば、
・直接出社できない人も、遠隔で採用して雇える
・出社が難しくなった社員も、安心して在宅など好きな場所で勤務継続できる
・災害で会社がダメージを受けたときも、社員が協力しながら事業継続が可能
などのメリットがあるので長期的には企業の収益につながるでしょう。
単にWeb会議ツールなどを使うより、リアルに近いコミュニケーションが可能
リモートワークを実現するには、
・チャットツールを使って文字ベースでやり取りを行う
・Web会議ツールを使って映像も交えながらコミュニケーションを行う
などの方法もあります。
多くの企業はチャットツールやWeb会議ツールなどを使ってコミュニケーション性を確保しますが、各ツールには弱点もあり万能ではありません。
チャットツールだと掲示板形式でやり取りを見返せますが、現在の感情など細かいニュアンスを伝えるのが難しいです。またWeb会議ツールでは相手の顔を見ながらコミュニケーションを取れるので細かいニュアンスも伝わりやすいですが、映像なので臨場感を出しながら業務を遂行するには不向きです。
AR・VRツールを活用すると、アバター(コンピューターで作った自分の分身)を相手に投影可能になります。そして投影されたアバターは自分の動きを真似(トレース)してくれるので、アバターを見ている相手は自分と実際に会って話しているかのような臨場感を得ることが可能です。
臨場感が高まれば、それだけ仕事をしている感覚が刺激され集中力向上なども期待できます。
さらにVRツールでは、アバターだけでなく空間も自由に制御可能です。たとえばVRデバイスを身に付けている全メンバーにオフィスのVR空間を用意し、その中でアバターを使いながらコミュニケーションを取れるようになります。
結果的に「同じ場所で仕事をしている」という認識を持ちやすくなるので、円滑にコミュニケーションを取りながら緊張感を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。
よりビジュアルを考えた表現ができる
チャットツールやWeb会議ツールなどでも、「Word」や「Excel」、「PDF」などのデータを共有することは可能です。しかし共有できるデータには限りがあり、複雑なビジュアルをその場で表現して共感を得るなどの使い方は難しいのが現状です。
AR・VRのリモートワークツールでは、3次元(3D)ベースのビジュアルも表現可能です。
たとえばクライアントとの会議中に開発中の製品情報をプロトタイプのデータとして3D投影すれば、その場で情報をダイナミックに共有しながら話を進められます。3Dデータはジェスチャーで方向を変えて見ることもできるので、細かい部分の確認も簡単です。
ビジュアルを考えた表現が可能になるので、現実世界でコミュニケーションを行うより返ってアピール性の高い会議などが可能になるかもしれません
リモートワークでVR・ARを活用する際の注意点
リモートワークでVR・ARを活用する際は、次の点に注意してください。
・インターネット回線やAR・VRデバイスなどの設備が必要
・操作に慣れる必要がある
インターネット回線やAR・VRデバイスなどの設備が必要
VR・ARは、3Dのデータを扱います。3Dのデータは書類データなど2次元(2D)のデータより圧倒的に重くなるので、容量をたくさん消費するのがネックです。
しかもアバターなど動くものを制御しながら、現在の状況をリアルタイムで投影する必要もあります。
このため回線が貧弱だと容量が足りず、満足にVR・AR機能が使えないかもしれません。VR・ARのリモートワークツールを導入する際は、まず回線速度などが十分か確認してみましょう。
またVR・ARを投影するための専用デバイスの導入も必須です。現在では廉価なVR・ARデバイスもたくさん登場していますが、その分性能についてしっかり確認しながらツール選定を行う必要があります。
操作に慣れる必要がある
VR・AR技術が一般に普及し始めたのは、比較的最近です。そのため「一般的なITツールは使い慣れているが、VR・AR技術には本格的に触れたことがない」という方も多いでしょう。
VR・ARツールは直感的な操作ができるので簡単に操作を覚えられますが、それでも使い慣れるまでには一定の時間が必要です。VR・ARツールを導入する際はトライアルを行いながら適切なツールを選定し、社員に使い方を覚えてもらえるよう研修も行うと安心でしょう。
リモートワークでVR・ARが活用されている事例3つ
ここからは活用の参考になる、リモートワークでVR・ARが活用されている事例を3つご紹介します。
・NTTデータ
・KDDI
・Spatial
NTTデータ
コロナウイルスを受けて積極的にリモートワークを進めている「NTT」グループですが、グループの「NTTデータ」では「テレワーク・デイズ(2018年7月23日〜2018年27日)」中にVR会議ツールを試験導入しています。
VR会議ツールは自社開発のもので、
・高臨場な会議空間の表現
・会議内容をWebで自動中継
・パソコンだけでなくスマホなどからも利用可能
などの機能が搭載されています。
社員にアンケートを取ると85%以上が使えるという回答し、リモートワークでのVR活用の有効性が一つ証明される結果になりました。
NTTデータでは2019年8月にVR会議ツールのデモンストレーションを行い、2020年度から社内でも本格的に活用していくと発表しています。今後は顧客にも提供していく予定になっており、注目が集まります。
KDDI
「KDDI」では、VRコラボレーションサービス「NEUTRANS BIZ」を使った社員研修を実施しています。
360度の映像再生機能やデータ共有機能を活用しながら、研修の場である「衛星通信センター」の詳細を知ることのできる内容となっていました。社員からも「遠慮しないで話し掛けられる」など、好評の声が多く挙がりました。
KDDIは社内でのVR活用だけでなく、VRのバーチャルイベントプラットフォーム「cluster」と共同してイベントを行うなどVRの普及にも力を入れています。
Spatial
アメリカのスタートアップ「Spatial」では、ARを活用したビジネスツール開発を行っています。
自宅など会社から離れた場所でツールを利用することで、アバターとして同僚を現場に表示してコミュニケーションを取れます。アバターはカメラを使って自動で作成されるので、モデル制作の手間が掛かりません。
また空間に資料などを投影し、スペースを限定しない自由なやり取りが可能になります。クリエイティブな作業をする際も、SpatialのARツールが役立ちそうです。
まとめ
今回はリモートワークにVR・ARを導入するメリット、そして注意点や事例などをご紹介しました。
新型コロナウイルスにより、リモートワークを実現できるITツールに注目が集まっています。中でもVR・ARツールは、没入感のあるコミュニケーションを行いながらクリエイティブなデータ共有などを行うのに適したツールです。
気になる方は、ぜひ各企業が提供しているトライアルを利用してみてください。