リモートワークの波は日本でも広がっていますが、一部の業種では導入が進めにくい部分もあります。
代表的なのが、製造業です。現場主義が根付いている製造業ではIoT化などは可能でも、リモートワークに踏み切るのはなかなか難しい面もあるでしょう。
しかし新型コロナウイルスの影響で製造業にも大きな経済的影響が出たことからも分かるように、何でも現場に頼るのは危険でもあります。可能な部分はリモートワーク化したほうが、緊急時にも柔軟に対応可能です。
今回はリモートワークを考えている製造業の方へ向けて、リモートワーク化の課題や解決のポイント、そして製造業でありながらリモートワーク化に成功している企業をご紹介していきます。
目次
製造業でリモートワークを実行するための課題
製造業でリモートワークを実行するにあたっては、次のような課題があります。
・ものを作るという性質上、リモートワークがもともと想定されていない
・三現主義が重視されたのが原因で、業務切り分けが行われていない
・コミュニケーションが重視され、リモートワークに及び腰の企業も多い
ものを作るという性質上、リモートワークがもともと想定されていない
製造業は、工場内で物理的に部品を使ってものを作り出す業種です。物理的に作らないといけないものはデジタル化しても意味がないので、リモートワークの導入意義が薄れることにつながります。
製造プロセスをリモートにして、在宅でも業務ができるようにするのは流石に無理があります。製造業の全工程をリモートワーク化できないのは、残念なところです。
三現主義が重視されたのが原因で、業務切り分けが行われていない
日本では昔から、製造業において「三現主義」が根付いています。
・現場:勤務場所で
・現物:実際に製造されたものを確認し
・現実:現状を考えて問題解決を行う
という三つの要素で、業務を行う考え方です。
三現主義自体は、悪い考えではありません。データだけでものを見るとずれが生じる場合もあるので、現場を見て判断するのは重要です。
ただし、三現主義に偏り過ぎるのもよくありません。何でも「現場で働くのが一番」になると、リモートワーク化できるはずの領域にも制限が掛かり視野が狭まってしまうからです。
コミュニケーションが重視され、リモートワークに及び腰の企業も多い
精密なものを作る製造業では、コミュニケーションも重視されます。実際に対面して話し合える安心感は、確かにリモートワークでは得られないものです。
ただし現場での話し合いだけに固執するのも、よくありません。現在の新型コロナウイルスは、対面での話し合いを難しくしています。いつまでも対面だけのコミュニケーションにこだわっていると、収益を圧迫する危険性もあります。
製造業でリモートワークを実行するためのポイント
ここからは、製造業でリモートワークを実行するためのポイントをご紹介していきます。
・無理にリモートワーク化しようとせずに、可能な部分だけを切り分ける
・リモートワーク用に、社内制度を整える
・コミュニケーションが、オンラインでもできることを社内に周知する
無理にリモートワーク化しようとせずに、可能な部分だけを切り分ける
製造業で、直接製造にかかわる部門はリモートワーク化するのは無理があります。しかしそれ以外の部分で、リモートワーク化できる部門はたくさんあります。
・管理部門
・営業部門
・経理部門
こういった部門を中心に、業務切り分けが可能な部分だけをリモートワーク化するのが重要です。
ただしリモートワークが原因で現場を見られないと、細かい現状把握が難しいのも事実です。このため出勤する日を設けるなど、アナログな出勤体制も組み合わせながらリモートワークを推進していく視点も重要になるでしょう。
リモートワーク用に、社内制度を整える
製造業でリモートワークを進めるには、社内制度の整備も必要です。
リモートワークを進めるには、経営層が下の層に向かって改革を進めていくトップダウン方式が有効です。しかし製造業の場合、トップダウンだと上手く行かないプロセスも多いので注意しましょう。
製造業の場合はリモートワーク化しやすい部門から、徐々に対象を広げていく戦略もポイントになってきます。
また、労働時間の管理もポイントです。適切に管理できていないと、リモートワークで働き過ぎなどの労働問題が起きる可能性もあります。
労働管理ツールなども導入して、効率的に労働時間を把握できるようにしておきましょう。他にも健康管理など気を付ける点は多いので、社内規約化して周知を怠らないようにするのが確実です。
コミュニケーションが、オンラインでもできることを社内に周知する
対面のコミュニケーションだけが重視される状況を打破するには、オンラインでもコミュニケーションが取れることを見せたほうが一番早いでしょう。
たとえば、
・現場の情報をチャットツールに共有し、アイデアを出してもらう
・パソコンやスマホなどで、会議に参加できるようツールを導入して実践する
こういった取組を行いながら、オンラインコミュニケーションの利便性を直接伝える観点も重要になるでしょう。
一度オンラインでもコミュニケーションが取れることが伝われば、リモートワーク実行の上で障壁も減るはずです。
製造業でリモートワークに成功している企業事例2つ
ここからは、製造業でリモートワークに成功している企業を3つ事例としてご紹介していきます。
・日本HP
・カルビー
日本HP
ビジネス向けのパソコンなどを製造する大手IT企業、「日本HP」では積極的に働き方改革を進めてきました。フレックスタイム制度を1970年代に導入したりと、先進的な改革を進めています。
リモートワークについては、
・一人一人に合わせた成果主義を導入し、適切な評価を行えるようにする
・部署ごとに申請を可能にし、上司が審査した上で柔軟にリモートワークを許可するか決める
・目の前にいなくてもコミュニケーションできるよう、クラウド会議ツールの導入などを進めた
などをポイントに実行してきました。
そしてフィードバックをもとに健康に関する情報発信を行うなど、リモートワーク体制をアップデートする姿勢も見せています。HPのように、リモートワークを積極的に実行しながら改善を行う視点は重要です。
カルビー
ポテトチップスなどで有名な食品製造業の「カルビー」では、トップと社員間の考え方の隔たりをなくす努力でリモートワークを浸透させました。
障壁がなるべく起こらないようトップが詳しく制度の意味や目的などを繰り返し説明するスタイルで、社員からの信頼を獲得しています。結果的に、他の企業に先駆けてリモートワークなどの働き方改革に成功しています。
リモートワークは、当事者である社員が導入しなくては意味がなくなります。トップが説明を怠らず真摯な姿勢を貫けば、社内全体でリモートワークを進めようという力が出てくるでしょう。
カルビーのリモートワーク事例は、さまざまなメディアで代表事例と紹介され話題になっています。政府の「テレワーク・デイズ」にも、積極的に参加している企業です。
まとめ
今回は製造業でリモートワークを実行するための課題、そして解決のためのポイントや製造業でリモートワーク導入に成功している事例をご紹介しました。
製造業は生産工程などでリモートワーク化するのが難しいですが、それ以外の部門は他業種と同じようにリモートワーク化が可能です。少しずつ制度を浸透させれば、無理なく導入が進むでしょう。
ぜひ製造業の皆さんも、リモートワークを推進してみてください。