日本の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は外国より遅れています。さまざまな問題が山積みの中、政府もいよいよDXに本腰を入れるため「デジタル庁」の新設を発表しました。
当初の予定より前倒しで新設されることとなったデジタル庁は、今後日本でDXを推進する重要な旗振り役となります。政府内のDXに関する課題も解決しながら、企業のDX実現をサポートできるかがポイントです。
今回はデジタル庁について詳しく知りたい方向けに、デジタル庁の概要や行うであろう取組、そして発足に関する課題などを解説していきます。
目次
2021年9月に発足予定!日本のDXの中心となるデジタル庁とは
2021年9月に発足予定!日本のDXの中心となるデジタル庁とは
デジタル庁の発足が始めて提唱されたのは、安倍前首相の辞任後に行われた自民党総裁選です。所信表明発表で現在の菅総理大臣がデジタル庁の設置を公約に掲げて当選しました。
記者会見で改めてデジタル庁の新設を発表し、「デジタル改革担当大臣」の役職を新設しています。デジタル改革担当大臣には「平井卓也」氏が就任して、行政のデジタル化方法を検討中です。
当初は2022年に発足を行う予定でしたが、コロナウイルスで日本の先行きが見通せない中、2021年9月と前倒しで設立のための準備が進められています。デジタル庁の人員は政府外からも集めることにして、ITに明るい人材を広く採用していく予定です。
デジタル庁は課題の残る政府内のシステムにもテコ入れしながら、社会のDX化を推進していく役割を今後担うことになります。
政府機関のDX化も推進!デジタル庁が行う予定の取組
デジタル庁については、現時点で次のような取組を行う予定とされています。
・各政府関連機関のシステムを統一
・マイナンバーカードの普及を促進する
・行政手続きをオンラインで完結できるようにする
・IT活用に関して規制を緩和する
各政府関連機関のシステムを統一
社会のデジタル化を受けて、各省庁もデータ管理のシステムを使いながら業務を行っています。しかしデータを利活用して業務ができていないのが現状です。
日本の役所は慣習として縦割りになっており、連携が難しくなっているのがネックとなっています。政府の場合たとえばIT振興策に関する業務は、経済産業省や総務省で業務内容が重複しており行政処理において無駄が生じています。
縦割りの弊害はコロナウイルスの蔓延によって露になりました。コロナウイルスに関する各行政手続きが遅れて国民の怒りを買っています。
日本の企業でも部署ごとにシステムが細分化されており、データが部署を通して共有されていないのが大きな課題となっているのもポイントです。デジタル庁が企業のDX旗振り役として機能するためには、まず省庁のデータ利活用を推進していける横割りの行政体制を整備していく必要があります。
デジタル庁ではばらばらになっている省庁間のシステムを連携させて、国と自治体間でもスムーズなデータ利活用ができるように取組を行っていく予定です。
マイナンバーカードの普及を促進する
マイナンバーカードは顔写真付きの証明書としても使えますが、ICチップが内蔵されており各行政手続きに活用できるようになっています(ICチップ搭載を発行時に選んだ方のみ)。マイナンバーカードを利用すると行政手続きが簡単になりますし、政府としても国民のデータを管理しやすくなるメリットがあります。
ただしマイナンバーカードは現時点でそんなに普及していません。
普及率が伸び悩んでいるのを受け、政府は「キャッシュレス・消費者還元事業」に続く消費行動加速の施策を兼ねて「マイナポイント事業」を開始しました。指定したキャッシュレス決済とマイナンバーカードを紐づければ、最大5,000円分のポイントが政府からもらえるキャンペーンとなっています。
4,000万人分の予算が用意されておりキャッシュレス決済サービスが別途追加でポイントをプレゼントしてくれるので、お得感は高い施策となっています。ただしマイナポイント事業を通しても上手くマイナンバーカード新規発行者の数は伸びておらず、現在まだ1,200万人ほどしか申し込みを行っていません。政府ではマイナポイント事業を2021年9月末まで延長すると発表しました。
政府ではマイナンバーカードの普及を促進するために、健康保険証や運転免許証などの機能をマイナンバーカードに集約する案も出しています。デジタル庁はマイナンバーカードの普及を促進するために施策を実行していく予定です。
行政手続きをオンラインで完結できるようにする
今までの行政手続きは各役所へ行って、紙の書類で手続きを進める必要がありました。しかし紙の書類を用意するのがまず面倒ですし、役所からの距離が遠い場合は時間のロスももったいない状態です。また役所が混雑していると手続きに時間が掛かるのもネックです。
コロナウイルスの蔓延により役所へ近づきたくない方も増加しています。そこでデジタル庁ではオンライン上で各行政手続きを完結させられるような施策を実行していく予定です。
具体的には
・マイナンバーカードを駆使して情報を読み取り行政手続きができる
・スマートフォンからサイトへアクセスして行政手続きの準備ができる
といった場面を想定しています。
すでにマイナンバーカードをコンビニに持っていけば証明書の発行はできる状態になっており、確定申告についてもパソコンやスマートフォンでオンライン上からできるようになっているので以前より便利にはなりました。しかしコンビニにわざわざ行かなくても自宅で手続きできたほうがより便利ですし、政府のサイトは「Internet Explorer」で起動するのが前提のパターンもあるので注意が必要です。
今後デジタル庁がシステムを刷新して、自宅でもさまざまな行政手続きができるように環境を整備できるかがカギになるでしょう。
IT活用に関して規制を緩和する
医療分野はコロナウイルスへの対応がひっ迫しており、ITを活用しながら安全に診療ができる体制を整えられるかが課題になっています。またクラスター発生のリスクがある教育分野でも、オンライン授業といった三密を避けられる体制作りが行われています。
しかし医療分野や教育分野ではIT活用に関して制約も多く、利活用に関しては政府の対応がカギです。
デジタル庁では医療分野や教育分野などでのIT活用規制を緩和して、より広い範囲でITが使えるように対策を打っていく予定です。
また医療分野や教育分野に限らず、ビジネスでもIT活用を妨げる規制は存在しています。デジタル庁がさまざまな分野の規制を緩和してITの活用を自由にできるかが注目されます。
紙の慣習は残っている!DXに関するデジタル庁の今後の課題
ここからはデジタル庁の今後の課題について解説していきます。
・紙や印鑑などの慣習がまだ省庁で残っている
・人材を集めて官民連携ができるか
紙や印鑑などの慣習がまだ省庁で残っている
デジタルデータを活用している政府ですが、まだ紙や印鑑といった書類に関する慣習は残っています。慣習が残っていることで行政処理の遅れも発生しているので、早急に解決する必要があります。
ただし紙や印鑑などをいきなり撤廃してシステム化するのは現実的ではありません。デジタル庁が明確な方針を基に政府内の古い書類に関する慣習を取り払っていけるかがDX成功のポイントになってくるでしょう。
人材を集めて官民連携ができるか
デジタル庁ではITを専門とする人材を民間人からも集める予定です。総勢500人を想定している人員のうち、100人以上を民間人で固めて官民連携を図る方針になっています。
ただし海外のように官民連携を進められるかは分かりません。海外と日本では置かれている状況が違うので、海外の見よう見まねをしても施策は成功しないのがネックです。
海外の事例を参考にしながら日本版にローカライズして官民連携スムーズに進められるかもデジタル庁の課題になりそうです。
まとめ
今回はデジタル庁とは何か、そしてDXに関するこれから予定されている取組や課題などを解説しました。
デジタル庁新設により、政府の関連機関がDX化して私たちが行う行政手続きが便利になることが予想されます。ただし古い慣習を取り払ってデジタル庁が改革を進めていけるかが課題になりそうです。
ぜひデジタル庁の最新動向をチェックしてみてください。