アウトソーシングに興味があるけど、失敗が怖くて二の足を踏んでいる担当者もいることでしょう。アウトソーシングは失敗しやすいと思われがちですが、その失敗には必ず理由があるものです。
アウトソーシングにおける失敗例や問題点を確認して、アウトソーシングを成功させましょう。
目次
アウトソーシングは失敗が多い?
法改正や経済のグローバル化、働き方改革など企業の置かれている状況は劇的に変化を続けており、今まで通りの経営を続けて行くことが難しくなってきています。
こういった世相を反映して、直接利益に関わらないノンコア業務をアウトソーシングする企業が増えており、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などが注目を集めています。
しかし一方で「アウトソーシングって失敗が多いのでは?」という声もよく耳にします。
確かにネット上でもアウトソーシングの失敗例がたくさんヒットしますし、そういった不安を抱く気持ちも理解できます。
ただ、アウトソーシングを失敗するのには必ず理由があるのです。そして、その理由をたどっていくといくつかの傾向があります。
アウトソーシングを成功に導くには、その問題点を理解し、失敗の事例とそうならないための対応策を知っておくことが大切です。
関連ページ:今さら聞けない! BPOとはどのようなもの?
アウトソーシングの問題点
アウトソーシングで失敗しないために、アウトソーシングの問題点を事前に知っておくことが大切です。
自社にノウハウが培われない
専門性の高い業務を外部に任せきりにしてしまうと、その業務のノウハウを組織の中に蓄積することが困難になってしまいます。このような事態を防ぐために、委託先に業務仕様書を作ってもらったり、定期的にすり合わせをすることが必要です。
この問題に関して詳しく解説します。
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スキルセットの低下
ある分野や技術に関する業務を外部のベンダーに依存することで、自社の従業員がその分野におけるスキルや経験を獲得する機会が失われることがあります。
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競争力の喪失
業界内での競争優位を保持するためには、一定の技術やノウハウが必要です。これを外部に依存することで、長期的に自社の競争力が低下するリスクがあります。
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イノベーションの遅延
自社内での技術やノウハウの蓄積がない場合、新しいアイディアや技術の発展に対応するのが難しくなることがあります。
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意思決定の遅れ
重要な情報やノウハウが外部ベンダーに依存している場合、状況の変化や新しいチャンスに迅速に対応するのが難しくなることが考えられます。
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コストの増加
初めはコスト削減のためにアウトソーシングを行っても、長期的に自社内でのスキルやノウハウが不足すると、再びその領域の業務を内部で行いたい場合に、新たに人材を育成するなどのコストが発生する可能性があります。
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業務の再内製化の困難
アウトソーシングを長期間行っていると、その業務を再び社内で行うことが困難になることがある。これは、必要な人材、設備、技術の不足から来る問題です。
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知的財産のリスク
一部のノウハウや技術が外部のベンダーと共有されることで、知的財産の保護が難しくなることがある。
費用がかかりすぎることがある
アウトソーシングをすると、必ずコストの削減ができるかというとそういうわけではありません。イレギュラー業務の対応や、システムの修正などで追加料金が発生すると、想像以上に費用がかさんでしまうことがあります。
これを防ぐには、事前にしっかり目標を設定して、全体像を見える化するのが大切です。
アウトソーシングの失敗例
では、実際にアウトソーシングで失敗する理由にどんなものがあるのでしょうか。代表的な失敗例を見て行きましょう。
アウトソーシングする旨を社員と共有できていない
アウトソーシングに踏み切る際、現在その業務を担っている社員に内密に進めようとするケースがあります。
担当する社員にとって「自分が今までやってきたことはノンコア業務で、外注できる簡単な作業」とネガティブな意味に取られてしまうかもしれないと、言い出せない気持ちは理解できます。しかし、今までその業務を行ってきた担当者を抜きにしてアウトソーシングを成功させるのは至難の技です。
会社ごとに存在するローカルルールや、業務詳細、業務フローや処理手順をその社員抜きで行うのは不可能といっても過言ではありません。アウトソーシングを担当者に伝えずに、ある日突然「君がやっていた業務は外注するから、外注先の担当者に引き継いで」といってうまくいくわけがありません。
今まで誇りを持って行ってきた業務が突然外注されることになったら、適当に引き継ぎが行われたり、反発を起こしてしまうというケースも起こりえます。
アウトソーシングをする際は、現場の社員を最優先に考えることが重要です。
「あなたは会社にとって必要な優秀な社員だから、コア業務を任せたい」というように、しっかりと伝え、担当者の協力のもとアウトソーシングすれば成功の確率が上がります。
付き合いが長いなどの理由でアウトソーサー(外注先)を選んでしまう
アウトソーシングを考える場合、外注先のアウトソーサー選びが重要です。アウトソーサーを選ぶ際に、「社長の昔からの知り合いだから」「企業が長くお世話になっているから」などの理由で選定する場合も、失敗する可能性が高くなります。業務のアウトソーシングに対応した業者というのはたくさん存在しますが、その中から冷静な判断で「会社にとって利益のある選択」をしなければいけません。そもそも企業内で改革を起こすためにアウトソーシングを選択しているので、前時代的なことは一切なくすのが賢明です。
アウトソーサー選びの失敗
アウトソーシングをする際に、最も多い失敗がアウトソーサー選びの失敗といっても過言ではありません。
例えば、販売の会社がコールセンター業務をアウトソーシングするケースで考えてみましょう。コールセンターの従業員の出入りが思った以上に激しく、商品知識や対応の手順を理解できていない状態でコールセンターを運用してしまう、ということがあります。
お客さんと直接やりとりするコールセンターの評判は、直接その会社の評価へとつながりかねません。アウトソーサーを選ぶ際は、それを選ぶチームを編成し、リサーチと見積もりを重ねて最も会社に合った企業を選ぶ必要があります。
アウトソーサーに丸投げしてしまう
アウトソーサーに丸投げしてしまうというのも、アウトソーシングの失敗でよくあるケースです。
BPOでは、業務プロセスごと外部に発注します。しかし例えば、会計の仕事を丸ごとアウトソーシングした場合、社内に経理のことがわかる人が1人もいなくなったらどうでしょう。
数値情報をさまざまな切り口からまとめたくても誰もできる人がいなかったり、子会社に資金繰り表を作らせたくても社内にそれを指導できる人材がいないなどのケースが考えられます。全てをアウトソーシングすることになり、それには毎回費用がかかります。
こういった失敗を侵さないためには、社内の体制を考えて整え、把握している人を社内に保持し、経理事務だけをアウトソーシングするなどの選択があります。
関連ページ:外注先企業はどう選ぶべき? 選定のポイント
まとめ
アウトソーシングは、「コストを下げたい」「仕事を楽にしたい」という心構えから始めるのではなく、「会社の効率をあげたい」「社員にやりがいを与えたい」、というような気持ちで取り組むのが大切です。社内で一丸となって、十分に検討し適切な手順を踏んで進めていきましょう。
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