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今さら聞けない!BPRとはどのようなもの?

今さら聞けない!BPRとはどのようなもの?

BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)このアクロニム(略語)についてあなたはどれくらい知っていますか?業界のプロフェッショナルやビジネスマネージメントの専門家でさえ、この手法の具体的な内容やその真価について全面的に理解しているとは限りません。では、なぜBPRはビジネスにおける極めて重要な概念となっているのでしょうか?それは単に流行りのビジネスジャーゴンなのでしょうか、それとも企業の成長と成功を促進するための実効性のある戦略なのでしょうか?この記事では、BPRの起源から、その機能、メカニズム、利点、課題、そして他の手法との比較まで、詳しく分かりやすく、専門的に解説します。

目次

1. BPRについての疑問を解決

2.BPRの起源と基本理念

3.BPRの具体的なメカニズム

4.BPRの利点と課題

5.BPRと他の手法との比較

6.BPRを理解し、適用するためのステップ

7.BPRの関連資料とリソース

8.最後に

1. BPRについての疑問を解決

1-1.BPRとは何か、その概要と機能

BPRはビジネスプロセスリエンジニアリング(Business Process Reengineering)の略語で、一言で言えば、組織の基本的なビジネスプロセスを根本から見直すアプローチです。

この概念は、1990年にマイケル・ハマーとジェームズ・チャンプイが提唱しました。彼らは既存のビジネスプロセスが時とともに非効率的になり、それが組織のパフォーマンスを阻害する可能性があると指摘しました。これに対する対策として、BPRは「根本的に考え直す」を提唱します。つまり、一部を修正または改善するのではなく、プロセス全体をゼロから再設計するのです。

その機能は大きく分けて3つあります。

効率性:無駄を排除し、プロセスを合理化することで、組織の業務効率を向上させます。

革新性:新しいビジネスプロセスを導入し、それにより競争力を向上させ、革新的な解決策を推進します。

適応性:組織が市場の変化に迅速に対応し、顧客ニーズを満たす能力を高めるための手段となります。

このように、BPRは企業が成長し、競争力を維持するための重要な手段であり、その目的は既存のビジネスプロセスを根本から見直し、より効率的で、革新的で、適応性のある組織を作ることにあります。

1-2.BPRがなぜ重要なのか、その重要性と理由

BPRの重要性は、その戦略が企業にもたらす可能性のある劇的な改善にあります。企業は常に競争環境の中で生き残るための戦略を模索し、その中でBPRは組織が自身のビジネスプロセスを大規模に改革し、新たな価値を創出する手段としての機能を果たします。以下に、その主な理由を説明します。

効率性の向上:業務プロセスの無駄や冗長性を特定し、排除することにより、効率性を大幅に向上させることが可能です。これは結果としてコスト削減、生産性向上、そしてよりスムーズな業務フローをもたらします。

競争力の強化:新しいビジネスプロセスの開発と実装を通じて、企業が競争環境に適応し、優位性を確保するのを支援します。これにより、企業は市場の変化に迅速に対応し、競争者に先んじて革新的な解決策を提供することが可能となります。

顧客満足度の向上:顧客中心のアプローチを促進します。ビジネスプロセスを再設計することで、より高品質な商品やサービスを提供し、結果として顧客満足度とロイヤルティを向上させることができます。

変革と成長:最後に、BPRは組織の変革と成長を促進します。BPRは組織が現状を打破し、新しい道を模索する機会を提供します。これにより、企業は自身の存在意義を再確認し、未来のビジョンを形成するのに役立ちます。

これらの理由から、BPRは現代のビジネス環境において極めて重要な戦略となっています。それは単にプロセスを改善するだけでなく、組織全体のパフォーマンスを向上させ、変革と成長を実現するための道具となり得るからです。

2.BPRの起源と基本理念

2-1.BPRの起源、その発展の背景

以下に、BPRの起源とその発展の背景を年代別にまとめた表を示します。

イベント
1990年 マイケル・ハマーとジェームズ・チャンプイがBPRの概念を初めて提唱。
1993年 ハマーとチャンプイが「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution」を出版し、BPRの重要性とその実装方法を広く紹介。
1990年代後半 企業の間でBPRが広く受け入れられ、その導入と適用が進む。
2000年代初頭 ITの進化により、BPRの実行が容易になり、さらに多くの企業がBPRを導入。
2000年代後半以降 ビッグデータとAIの台頭により、BPRが新たな可能性を見出す。組織がビジネスプロセスを分析し、再設計する際の情報と洞察が大幅に増加。

BPRの発展は、ビジネス環境の変化と密接に関連しています。それは主に技術の進化、市場競争の激化、顧客ニーズの多様化など、外部環境の変動に対する企業の対応が求められた結果としています。

2-2.BPRの基本的な理念とその特徴

BPRの基本的な理念は、「根本的な再設計」です。 すなわち、組織の既存のビジネスプロセスを微調整や改善するのではなく、全体を見直し、可能ならばゼロから再設計することを目指します。 これにより、企業は革新的な解決策を導入し、その業績を大幅に向上させることができるという考え方です。

この理念の背後には、以下のような特徴があります。

ラジカルな変化:細部の修正や微調整による改善ではなく、組織全体のビジネスプロセスの大幅な改革を目指します。 このため、BPRは通常、大規模な組織変革を伴います。

顧客中心:顧客満足度とサービスの品質向上を最優先事項とします。 そのため、ビジネスプロセスの再設計は常に顧客のニーズと期待を満たすことを目指します。

クロスファンクショナル:組織の各部門や機能間の壁を取り払い、より円滑なコミュニケーションと協力を促進します。 これにより、ビジネスプロセス全体の効率性と効果性を向上させます。

技術の活用:新しい技術の利用を積極的に推奨します。 これにより、プロセスの自動化、効率化、そして情報管理の改善を達成します。

継続的な改善:一度限りのプロジェクトではなく、組織の持続的な成長と変革を目指すフレームワークです。 これは、BPRが企業の継続的な学習と進化を促進する手段として設計されていることを意味します

これらの特徴により、BPRは組織にとって価値創出の強力な道具となります。また、組織が競争力を維持し、市場の変化に対応するための強力なツールとなります。

3.BPRの具体的なメカニズム

3-1.BPRがどのように作動するか、その具体的なメカニズム

BPRの具体的なメカニズムは、組織のビジネスプロセスを全面的に分析し、再設計する一連のステップにより構成されます。 まず、組織は現在のビジネスプロセスを詳細にドキュメント化し、それに関与するステークホルダーを明確にします。 プロセスの各段階が何であるか、どのように機能し、どのような結果を生むかを理解することが重要です。

次に、プロセスの弱点や問題点を特定します。 これには、無駄なステップ、不必要な複雑さ、低い生産性、顧客満足度の低下などが含まれるかもしれません。 この段階では、データ分析とフィードバックの収集が中心的な役割を果たします。

問題点が明確になったところで、組織は新たなプロセスを設計します。 このステージでは、クリエイティビティと革新が求められます。 新しいプロセスは、既存の問題を解決し、効率性を向上させ、顧客価値を最大化することを目指します。

再設計されたプロセスが準備できたら、次はその実装です。 組織は新しいプロセスを全体に展開し、関係者に適切なトレーニングを提供します。 また、この段階では変更管理が重要となります。 組織とその従業員は新しいプロセスに適応し、それを日常の業務に統合する必要があります。

最後に、新しいプロセスのパフォーマンスを評価し、必要な調整を行います。 BPRは継続的なプロセスであるため、常に改善と最適化を目指すべきです。

これらのステップを通じて、BPRは組織のビジネスプロセスを根本から変革し、パフォーマンスを向上させることが可能になります。

3-2.BPRの実際の4つの適用例

BPRの理論はそのままでは抽象的に感じるかもしれません。 ですので、ここではBPRが実際にどのように適用され、どのような結果を生んだかを具体的な事例を通して解説します。

例1:フォードモーター

1990年代初頭、自動車大手のフォードは購買部門の業務プロセスにBPRを導入しました。 それまでの購買プロセスは、書類の承認に非常に多くのステップを要し、効率が悪かったのです。 フォードは競合他社であるマツダのプロセスを基に、自社のプロセスを根本的に再設計しました。 その結果、フォードは承認に必要なステップを大幅に削減することができ、結果としてコストと時間の大幅な節約を達成しました。

例2:タコベル

 

ファーストフードチェーンのタコベルもまた、BPRの成功事例の一つです。 タコベルは店舗内での調理プロセスを見直し、食品の調理から提供までのプロセスを劇的に再設計しました。 その結果、店舗のスペース効率を向上させ、労働力をより顧客サービスに集中できるようになりました。 この変革により、タコベルはサービスの質と効率性を大幅に改善することができました。

例3:キャピタルワン

 

クレジットカード大手のキャピタルワンは、BPRを顧客承認プロセスに適用しました。 それまでの一律な審査基準を見直し、個々の顧客情報に基づいたデータ駆動型の判断を導入しました。 これにより、よりリスクの低い顧客に対して迅速にクレジットカードを提供できるようになり、同時に不良債権のリスクを低減することができました。 このBPRの結果、キャピタルワンは市場での競争力を大幅に向上させることができました。

例4:IBM

IT大手のIBMは、1990年代に入って大幅な業績悪化に直面しました。 それを契機に、IBMは全社規模でBPRを実施しました。 具体的には、ビジネスモデルの変革、販売とサービスの一体化、研究開発と製造部門の協働強化など、あらゆるビジネスプロセスを見直しました。 この結果、IBMは生産性と効率性を大幅に改善し、結果として大きな業績回復を達成しました。

4.BPRの利点と課題

4-1.BPRの利点と、それがもたらす結果

BPRの適用には、多くの利点があります。 以下に、その主な利点とそれがもたらす結果について詳述します

組織の柔軟性

企業が変化する市場環境に素早く対応する能力を強化します。 柔軟で効率的なプロセスは、新しい機会に迅速に対応し、予期せぬ問題に対処する能力を高めます。

イノベーションの促進

企業に対して既存のプロセスを根本から見直す機会を提供します。 これは新しいアイデアやソリューションの創出を促進し、イノベーションを加速する可能性があります。

プロセスの透明性の向上

BPRの過程では、業務プロセスが徹底的に分析され、理解されます。 この結果、プロセスの透明性が向上し、従業員やステークホルダーがプロセスの全体像を理解しやすくなります。

クオリティの向上

プロセスを見直し、不必要なステップを削減することで、製品やサービスの品質が向上することもあります。 これは顧客満足度をさらに高め、企業の評価を上げることにつながります。

意思決定の改善

プロセスの見直しにより、不必要な情報やデータの混乱が排除され、よりクリアな情報を基に意思決定を行うことが可能になります。 これにより、意思決定のスピードと精度が向上します。

これらの追加的な利点は、BPRの適用が企業に広範な影響を与えることを示しています。 しかし、実際の適用には慎重な準備と計画が必要であり、次のセクションではその課題と対策について見ていきます。

4-2.BPRの適用に伴う課題と対策

BPRの適用には、その利点だけではなく一定の課題も伴います。 それら課題とそれに対する可能な対策を以下に示します。

これらの課題と対策を理解し、適切に対応することで、BPRの適用による企業の成長と成功を最大化することが可能となります。

課題1:内部抵抗

しばしば大幅な変更を伴います。 これにより、従業員からの抵抗が生じることがあります。

  • 対策:変更管理のプロセスを確立し、従業員が変更に対して理解と支持を持つように努めることが重要です。 また、明確なコミュニケーションと従業員の教育を行うことも必要です。

課題2:実装の困難さ

BPRの導入は、全社的な取り組みを必要とするため、その実装は困難な場合があります。

  • 対策:適切なプロジェクト管理とリーダーシップが求められます。 全体のビジョンと目標を明確にし、それを実現するための具体的な行動計画を作成することが重要です。

課題3:期待外れの結果

BPRは大きな投資を必要とし、結果がすぐには現れない場合もあります。

  • 対策:期待値の管理とリスクの評価が必要です。 また、小さなステップで進め、途中経過を頻繁に評価し、必要な調整を行うことが求められます。

課題4:技術の適用

技術の利用を通じてプロセスの再設計を推進しますが、新しい技術の導入とその適用には困難が伴います。

  • 対策:技術の選択と導入には、専門知識と経験が求められます。 ITチームと経営陣が協力し、適切な技術を選択し、その導入と運用を計画することが必要です。

5.BPRと他の手法との比較

5-1.BPRと他の類似手法との比較、その差異

BPRは他の類似手法と比較して特異な特徴を持ちます。 以下の表は、BPRと他の主要な業務改善手法、すなわちリーンマネジメント(Lean Management)、シックス・シグマ(Six Sigma)、カンバン(Kanban)との比較を示しています。

ティッカー リーンマネジメント シックス・シグマ カンバン
基本的な目標 業務プロセスの根本的な再設計と改革 プロセスから無駄を取り除く プロセスのばらつきを減らす プロセスの流れを最適化する
適用ファン 広範(全社的な取り組み) 広範または特定のプロセス 主に品質に影響を与えるプロセス プロジェクトやタスクの管理
アプローチ 根本的な変革 持続的な改善 統計的なアプローチ 可視化とリミット設定
変更の規模 大規模な変更 徐々の改善 小~中規模の変更 徐々の改善
時間枠 長期的なプロジェクト 中~長期的なプロジェクト 中~長期的なプロジェクト 短~中期的なプロジェクト
  • リーンマネジメント:製造業やサービス業など、プロセスの効率化が重要な業種でよく使用されます。
  • シックス・シグマ:品質管理が重要な製造業、特に大規模な製造企業で広く使用されます。
  • カンバン:ソフトウェア開発やITプロジェクトなど、タスクの可視化と管理が重要な業務でよく使用されます。

これらの手法は、それぞれが異なる課題や目標に対応するために設計されています。 企業が適切な手法を選択するには、自社の状況、目標、及び課題を評価し理解することが重要です

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5-2.BPRが優れている点とその理由

BPRはその特性上、多くの他の手法にはない独特の優位性を持っています。 その優れた点とその理由を以下に述べます。

革新的変革への可能性

プロセスを根本から見直すため、他の多くの手法が表面的な改善に留まるのに対して、革新的な変革を可能にします。 これにより、企業は競争優位性を獲得し、業績を大幅に改善する機会を得ることができます。

テクノロジーの積極的活用

テクノロジーの導入を通じた効率化に重点を置いています。 これにより、企業は最新のテクノロジーをフルに活用し、労働力の生産性を向上させることが可能になります。

組織横断的な視点

企業全体の視点でプロセスを見直します。 そのため、部門間の壁を超えて、全体の効率と生産性を向上させることができます。

6.BPRを理解し、適用するためのステップ

6-1.BPRの理解を深めるためのポイント

ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)は、企業が効率と生産性を向上させ、コストを削減するための有力な戦略であり、その適用は多大な影響を及ぼす可能性があります。 しかし、その成功は、理解と適用方法に大いに依存します。 以下に、BPRを理解し適用するための主要なポイントを提供します。

ポイント1:BPRの基本を理解する

業務プロセス全体を再設計する手法であることを忘れないでください。 それは単に既存のプロセスを微調整するのではなく、最初からプロセスを再設計し、企業全体の効率と生産性を向上させることを目指しています。

ポイント2:BPRが必要な状況を特定する

全ての状況がBPRを必要とするわけではありません。 重大な効率性の問題や生産性の低下、顧客満足度の低下など、根本的な改善が必要な場合にのみBPRを検討するべきです。

ポイント3:組織全体のコミットメントを確保する

組織の構造と文化に深く関わるため、全体のコミットメントが不可欠です。 上層部のサポートを確保し、全てのステークホルダーがプロセスの変革を理解し、その必要性を認識するよう努める必要があります。

ポイント4:BPRを計画的に実施する

BPRは一夜にして達成できるものではありません。 それは複雑なプロセスであり、時間とリソースを必要とします。 また、具体的な目標と達成基準を設定し、プロジェクト全体を通じてその進行をモニタリングすることが重要です。

 

6-2.BPRを適用する際の注意点

まず最初に、BPRは一夜にして成功するような手法ではないという事を理解することが重要です。それは大規模な変革を伴うため、時間とリソースが必要であり、適切な計画と準備が必要となります。

さらに、組織全体の変革を目指すため、組織全体のコミットメントが必要です。このため、経営陣の強力な支持とリーダーシップが不可欠です。また、全てのステークホルダーが変革の必要性を理解し、それに取り組む意志を持つことが求められます。

その上で、企業の業務プロセス全体を対象とするため、その影響は広範で深刻なものとなり得ます。したがって、変革の影響を最小限に抑えるためには、適切なリスク管理と問題対応策を準備しておくことが重要です。

最後に、BPRの基本的な概念と原則を理解し、それを基に具体的な戦略と行動計画を策定することが求められます。そのためには、適切な知識とスキルを持つ専門家の助けを借りることも一つの選択肢となるでしょう。

7.BPRの関連資料とリソース

書籍:「Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution」は、マイケル・ハマーとジェームズ・チャンピ―による、BPRの原則と概念を詳細に解説した著名な本です。この書籍は、BPRの基礎を理解するための必読の一冊とされています。

【引用】:Amazon | Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution (Collins Business Essentials) | Hammer, Michael, Champy, James, Champy, James | Operations Research

ウェブリソース:Harvard Business Reviewのウェブサイトでは、BPRに関する多数の記事とケーススタディが提供されています。これらの資料は、BPRの理論と実践の両方についての理解を深めるのに役立ちます。

【引用】:ハーバードビジネスレビュー-リーダーのためのアイデアとアドバイス (hbr.org)

8.最後に

ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)は企業の業務プロセス全体を根本から改革する手法であり、効率性、生産性の向上、そしてコスト削減を達成する可能性を秘めています。

しかしながら、BPRを導入する際にはその基本的な概念と原則を深く理解し、それに基づく具体的な戦略と行動計画を策定することが重要になるでしょう。

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