コスト削減や生産性・業務効率の向上のため、業務のある部分を外部の業者に委託する流れは、製造業でも盛んに行われています。
「OEM供給」や「OEM業者」という言葉も頻繁に耳にするようになりましたが、「それって外注ってことじゃないの?」といまいちその差が明確になっていないという現状があることは否めません。
OEMと外注の違いをしっかりと理解しておくことは、製造業のみならず、幅広いジャンルのメーカー企業にとって経営戦略に必要な知識です。しっかり把握しておきましょう。ここではOEMと外注の違いなどを導入事例とともに解説していきます。
目次
OEMとは他社に自社製品の製造過程を委託すること
OEMは「Original Equipment Manufacturing」の略で、製造メーカーが他社ブランドの製品を製造することを指します。
ここまでですと外注と同じような意味合いになってしまいますが、外注との大きな違いは、製品を開発したメーカーの生産コストにあります。
外注とは、あるメーカーが自社製品を製造する際に、自社の生産ラインの一部を外部の製造メーカーへ委託するものです。しかしあくまでメーカーが保有する生産施設と人員による自社製造が基本となりますので、外注はピンポイント的な業務軽減や製品機能の向上などが目的となります。
一方OEMでは、あるメーカーが自社製品を開発し商品化しようとした際、生産ラインを丸ごと製造メーカーへと委託します。そのため、自社で工場や製造人員を持つことないため、コストの大幅な削減が実現するのです。
OEM業者はメーカーのブランド力を借りて収益を上げる
非常に高い技術力を持つ中小企業が日本の製造業界にはたくさん存在します。彼らの技術は非常に素晴らしいものであっても、販路や知名度といった点では大手メーカーには及びません。そこで、大手メーカーの持つブランド力やマーケティング力を借りて、自社の技術を売り出すのです。
生産ラインを自社で賄うコストを無くせるというメリットがメーカーにありながらも、受託する製造メーカーにとっても広告費ゼロで自社の技術を売ることができるという、win-winの関係性ができあがるため、OEMは多くの業界で取り入れられているのです。
自社のブランド力を強固なものにしたアップルのOEM戦略
OEMビジネスは、iPhoneなどで知られるアップル社の大規模な展開により、電子機器メーカーだけでなく、様々なメーカーにとっても有益な経営戦略モデルであるとして知れ渡りました。
アップルと強い関係にあるのが、台湾の大手製造メーカーの鴻海です。
電子機器の受注生産を専門とする鴻海は、アップルだけでなくデルやヒューレッド・パッカードといった大手メーカーへのOEM供給を行っており、いまだ成長を続ける製造メーカーです。
鴻海の他にも複数のOEM業者と契約しているアップルでは、社員たちは魅力的な自社製品の開発に専念し、次々とイノベーティブな製品を発表してきました。
経営コストを最大限、商品開発やマーケティングに使用することで、世界中にアップル製品を供給できる生産ラインを保ちながらも、自社のブランド力を高めていくことができたのです。
OEMビジネスは今後も勢いを増していく
このように、OEMは広い意味では外注の中に入れることができますが、委託する企業と受託する企業の関係性に大きな違いがあることがお分かり頂けたかと思います。
これまで自動車業界で一般的だったOEMも、現在では携帯電話やパソコンといった電子機器、化粧品やアパレルメーカーなど、幅広い業界でも導入されています。
コスト削減と効率・生産性の向上を目指すためにも、今後OEMビジネスに特化した製造メーカーも増えてくるでしょう。
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