企業による働き方改革の推進や、IT技術の進化により、時間や場所に縛られない自由な働き方を選ぶ人が増えています。クラウドソーシングサービスを提供するランサーズが2018年に行った調査によると、副業・兼業を含む業務委託で仕事を行っているフリーランス人口は1,119万人と、日本の人口の17%が、フリーランスとして収入を得ているとされています。また、フリーランスの経済規模は20兆円を超え、一人当たりの報酬も増加傾向にあることから、委託ベースで活動しているパラレルワーカーが増加しているとみることができるのです。
社内で行っていた業務を外部に委託することは、多くの企業が行っていることですが、これまで主要であった代行専門業者やBPOベンダーに並び、近年急速に存在感を増してきているのが、フリーランスではないでしょうか。市場のニーズが多様化・複雑化するにつれ、企業にとっても業務量・種別共に増加傾向にあると言えます。そのため、より細分化された業務やプロジェクトに対し、ピンポイントで投入できるプロフェッショナルへのニーズが高まっていることが、フリーランスへの業務委託が増加している背景にあると言えるでしょう。
では、フリーランスへ仕事を発注する際、それは外注なのか、業務委託なのか、迷ったことはないでしょうか。ここからは、フリーランスとの契約を円滑に進めるために知っておくべき、外注と業務委託の違いを解説していきます。
目次
「外注」は契約締結時には避けたい表現
まず、外注と業務委託の大きな違いをおさえておきましょう。外注とは、「外部の業者に対し企業が行っている業務の一部分を代わりに行うことを依頼すること」全般を指す広義なニュアンスとなるため、フリーランスとの契約においても、具体的な契約形態はあいまいな表現と言えます。一方で、業務委託とは、民法上、「請負契約」と「委任/準委任契約」の2つの契約形態の総称として、あくまで実務上使用される言葉です。そのため、どちらの契約を結ぶかは、依頼する業務内容や責任・義務の所在により、変わってくるのです。
このように広義でのフリーランスがすべて該当する可能性を含んだ「外注」という表現は、実際の契約を交わす際には、適している表現とは言えません。業務内容や品質において両者間での齟齬が生まれやすくなり、また、仕事を行う上での責任の所在なども法的規制がないため、契約後の様々なトラブルの要因となり得てしまいます。その点では、「業務委託契約」という言葉も、民法上は存在しませんので、しっかりと法的効力をもつ「請負契約」か「委任/準委任契約」のどちらかを締結することで、トラブルやリスクを回避することができるのです。
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達成すべきは「成果物の完成」か「作業の遂行」か
では、法的な効力をきちんと持った「請負契約」と「委任/準委任契約」ですが、実際にはどのような業務を対象として、使い分ければよいのでしょうか? ここでのポイントは、ゴールが「成果物の完成」か「作業の遂行」かという点です。前者は、契約時に双方で決めた期日までに、決められた作業や制作物を完成させ、納品すること。後者は、特定業務を遂行するという行為そのものがゴールとなります。そのため、請負契約を交わしたフリーランスは、企業側の求める品質の成果物を納品する必要があり、また、その品質においても、納品後の修正も責任をもって行うことが義務付けられています。
例えばフリーランスのシステムエンジニアに仕事を依頼する際、依頼内容が、企業が企画したシステムの開発である場合は請負契約、社内システムの保守・運用業務を一定期間行ってもらう場合は、準委任契約です。ここで、準委任契約とした理由は、委任契約の対象は法律行為に関わる仕事、つまり士業(税理士や会計士など)であり、法律行為外の業務を遂行する場合は、準委任契約となるためです。
企業は適切な契約を結ぶことで様々なリスクを回避できる
働き方が多様化し、フリーランスへの業務委託が増加する中、企業と個人間でのトラブルもまた、増加傾向にあります。クラウドソーシングやスキルシェアサービスなど、個人が保有する専門知識やノウハウの売買が簡単に行える環境になっていることから、業務委託契約におけるグレーゾーンが拡大していることも背景にあります。報酬の支払いや品質保証などをきちんと定義し、双方が承諾した上で契約を結ぶことへの重要性は益々高まっていると言えるでしょう。企業側にとっては、知的財産や個人情報などの社内機密情報の取り扱いにおいても、より慎重な対策を講じた上で、優秀なフリーランスのスキルを活用していくことをおすすめします。