日本国内の各業界において、労働人口の減少が大きな問題となっている中、深刻な人材不足に悩んでいるのがIT業界です。経済産業省が発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によると、2015年時点で約17万人の人材が不足しており、このままIT分野が成長を続けると、2020年には約37万人、2030年には約79万人とIT人材の不足は一層深刻化していくことが予想されています。発展著しいIT業界において、なぜここまで人材不足が加速しているのでしょうか？ 今回は、IT業界で進む人材不足の背景と、特に需要の高い分野について解説します。
目次
次々と起こるイノベーションに人材が追いつかない
ビッグデータ・AI・IoTなどの先端技術市場は急成長を遂げている中、人材不足は一層深刻化しており、2020年には約4.8万人の人材不足が予想されています。国内全体で少子高齢化が進むことにより、労働人口全体が減少傾向にあることに加え、IT業界においては、このような先端技術の進化スピードに人材の供給が追いつかないことが、その原因となっています。
次々と新しい技術が生まれる中で、先端技術分野で活躍する人材は20～30代が中心です。ITリテラシーの高い世代ともいわれるミレニアル～Z世代は、AIなどの先端技術との親和性が高く、業界をけん引している中心的存在です。彼らが中心となり、先端技術を活用した様々なベンチャー企業が誕生することで、シリコンバレー的な自由な企業文化が広がっていることも、大きな特徴になります。しかし、若い人材により業界が活性化している一方で、人材の疲弊による離職率の高さも問題視されています。先に述べたように、先端技術を扱う企業は、スタートアップなどの創業間もない企業が多く、一人のエンジニアが様々な業務を兼務し、長時間労働が当たり前となっているケースも多いのです。そのため、優秀な若手人材も短期間で疲弊してしまい、早々に離職してしまうということが頻繁に起こっています。
加えて、40代以上の人材においても、新しい技術を身につけることが追いつかない、また、20代～30代が中心の若い企業文化に馴染めないといった理由から、40代以上のエンジニアの採用を控える企業が多いのも人材部族に拍車をかけている原因の一つです。このように、極めて少ない人材を取り合って酷使しているというのが、国内におけるIT業界の現状なのです。
さらなる市場拡大が予想される、ビッグデータ・IoT・AI
今後の市場拡大に関する調査においても、最も高い成長が見込まれている分野が、ビッグデータ・IoT・AIです。ビッグデータは、AIやIoTにとっても欠かせない存在ですので、ビッグデータを扱うことができる人材は一層需要が高まっています。エンジニアはもちろん、膨大なデータを取り扱うスキルに秀でた人材、データアナリストやデータサイエンティストの存在感も世界的に強まっており、今後も益々需要が高まることが予想されます。そして、AIエンジニアやIoTエンジニアも、同じくニーズが一層高まる職と言えます。様々な業界において活用が進められている技術であるため、新しいサービスや商品には欠かせない存在となっていくでしょう。
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トレンドの移り変わりの激しさもIT業界のカラー
3つの先端技術分野における需要の高さを挙げましたが、その他にも、情報セキュリティやゲーム分野もトレンドとして、需要が高い分野です。情報セキュリティは、日本の弱点ともされる分野ですので、2020東京五輪に向け官民一体で急速に強化体制の構築が進められています。また、VRやUnityに精通したゲームエンジニアも、ソーシャルゲームなどのオンラインゲームの人気から、需要の高い分野です。
現在は、IT人材強化のための政策の実施や、学習教材の充実により、若手人材・ミドル人材ともに様々なITスキルの習得が容易になりました。エンジニアやプログラマーへの転職も増加傾向にありますが、トレンドの移り変わりの激しいIT業界において、第一線で活躍し続けるためには、常にスキルをアップデートし続けることが欠かせません。需要の高い分野も刻々と移り変わるため、そのスピードに対応した、新しいスキルの習得をバックアップする体制整備も、今後需要が高まる分野のひとつと言えるでしょう。
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