1990年代にフォードやIBMクレジットなどの大手米企業の多くが実践し、競争力強化と企業成長を達成したBPR(Business Process Reengineering)への関心が、近年日本国内でも高まりを見せています。少子高齢化社会を背景とし、企業はこれまでの企業経営のあり方を根本的に立て直す必要性が高まったことが一因です。BPOなどによる業務効率化や業務プロセスの改善もBPRの一部ですが、対象が企業活動全体となるため、なかなか経営戦略としてBPRが社内で進まないケースがまだまだ多いのも現状です。そこで今回は、BPRを円滑に進めていく上で有効なフレームワークを紹介していきます。
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目次
BPRは現状を否定しすべてをはじめからやり直すこと
業務改善と同義に扱われることが多いBPRですが、その意味は大きく異なります。改善が、「現状を肯定し、劣っている部分を修正すること」であるのに対し、BPRは改革、つまり「現状を否定し、既存の制度やシステムを立て直すこと」を意味します。BPRは、何かを「修正」したり、「改善」したり、「強化」したりすることではなく、「一からやり直す」ことを意味するのです。そのため、大胆で根本的・抜本的な業務プロセスの改変が必要となるため、フレームワークを用いることで、取り組むべき課題や変更すべき点が可視化され、より戦略的にBPRを進めていくことが可能となります。
フレームワーク例その1. シックスシグマ
シックスシグマは、アメリカ・モトローラ社で開発された手法で、高品質な製品を安定して製造するための業務効率化を達成する効果的な手法として、国内でもソニーや東芝・日立マクセルといった大手メーカーが導入した過去があります。生産工程だけでなく、関連するサービスや管理部門などの業務におけるムリ・ムダを排除するアプローチは、全社的な業務改革運動に大きく貢献するとして、製造業だけでなく多くの業種において導入が進められています。非効率な作業や修正作業、顧客の不満やそれらに伴う売上損失などを計算し、改善によりどれほどの利益額の変化がもたらされるかを診断する「不良品質コスト」という指標を設けている点が特徴です。顧客満足度をトップダウン型で徹底的に追求し、その成果を利益という視点から評価する点は、「プロセス重視」のBPR推進においても有効な方法といえます。
フレームワーク例その2. 4C
顧客視点を重視したマーケティングのフレームワークで、企業視点の4P理論が進化して誕生したものです。
・4P理論
Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)
・4C理論
Product→Customer Value(顧客にとっての価値):ターゲットへのメリット・課題解決
Price→Customer Cost(顧客負担の費用):ターゲットが節約できるコスト(時間・金額)や避けられるリスク
Place→Convenience(顧客にとっての利便性):時間と手間を抑えた、サービスや商品の入手方法
Promotion→Communication(顧客とのコミュニケーション):双方向の関係性を構築する方法
ターゲットとする顧客にとって高付加価値のある商品やサービスを生み出す上で必要な、企業と顧客間での現状と理想のすり合わせに効果的な手法であるため、両者の間に乖離があるポイントが改革の必要性が高いポイントとすることができます。
フレームワーク例その3. SWOT分析
自社の現状分析に有効なフレームワーク。自社を取り巻く内部環境(Strength「強み」、Weakness「弱み」)と外部環境(Opportunity「機会」、Threat「脅威」)の観点から、現在の経営環境を可視化することができます。それにより、戦略的改革が必要なポイントを洗い出すことが可能です。自社分析は、シックスシグマや4Cとった戦略フレームワークを行う前の段階、BPRのスタート段階で実施しておくと、より円滑に戦略策定を進めることができます。
フレームワークは思考の整理術
課題解決や業務効率化・経営戦略に有効なフレームワークは他にも多く提唱され、様々なケースで活用されています。しかしその一方で、フレームワークの実施で満足してしまい、実際の行動が伴っていないケースが多いことも問題として挙げられます。フレームワークは経営状況の把握やゴールの設定など、様々な要因を整理して答えを導き出すことには非常に効果的ですが、可視化された課題や目指すべきゴールに向かってアクションを起こさなければ、もちろんBPRを成功させることは不可能です。スピーディーな経営判断が一層求められる現代において、素早く思考や状況・要因の整理が行えるフレームワークをうまく活用し、スピーディーな経営改革を実現していきましょう。
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