技術の飛躍的な進歩や、各国の市場間境界線の消滅にともなうビジネスのグローバル化、ニーズの多様化・複雑化による選択肢の増加は、企業経営のあり方を根本的に見直し、再構築する必要性を一層高めています。その中で注目を集めているBPR(Business Process Reengineering)ですが、その推進の一環としてRPAを活用することで大きな効果を生み出せるとして注目されています。今回は、BPRにおけるRPAの活用方法の事例を紹介しながら、その効果を解説していきます。
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目次
RPAによる業務の可視化
BPRへの継続的な取り組みを指す、BPM(Business Process Management)において、業務プロセスの可視化は最も重要なポイントとなります。業務の進め方にムリ・ムダが無いかを洗い出すために、業務の開始から完了までの手順を棚卸しすることは、作業手順を分析し再構築する上で、まず行うべきステップです。そして近年、業務効率の向上を図る上で関心を集めているRPA(Robotic Process Automation)の導入においても同様のことが言えます。導入準備において作業工程の可視化を必要とするRPAは、BPRの展開とシンクロする部分が多いツールなのです。
PC上での一定ルールに基づいた反復作業による定型業務を得意とするRPAは、作業効率を飛躍的に高め、またヒューマンエラーや業務負担の大幅削減を短期的に達成できることが大きな強みです。高品質な成果物を安定して生み出し続ける点は、顧客満足度の向上につながるBPMとなっています。そして、国内企業においても、BPRの一環としたRPA導入により大きな変革が進められています。
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事例その1. ロボットを主体とした全社改革
ロボットによる業務プロセスの自動化は、保険業界で急速に進んでいます。銀行窓口で行われる窓販業務にRPAを導入し、6台のロボットが26業務を担当している日本生命保険では、保険情報などの顧客データをRPAが読み込めるよう、各書面に読み取り用バーコードを付与しました。情報のインプット作業プロセスをロボット対応に変更することで、正確なデータ管理と入力データ確認における業務工数を大幅に削減しています。同社は、今後も全社の各業務におけるRPA展開を計画しており、業務効率化と顧客の利便性を共に叶えるサービスを目指しています。
また、第一生命保険においても同様です。既に90以上のロボットが各部門に導入されており、保険契約者のチェックや新商品開発のテスト検証などが行われています。全保険契約すべての契約者をチェックする作業など、全導入部門あわせて2万7,000時間分の作業をRPAが担っており、大幅な作業コストの削減を達成しました。また、両社とも今後の全社展開へ導入準備を進めており、RPAを主体とした業務プロセスや組織編成の再構築をおこなっています。インステックの広まりにより、保険業界はBPRにRPAが効果的に活用されているロールモデルとなりつつあるのです。
事例その2. 生産性革新から進化した働き方改革
リース事業や不動産事業など幅広い事業を展開するオリックスグループでは、グループのシェアードサービスセンターであるオリックス・ビジネスセンター沖縄(OBCO)において、生産性革新プロジェクト「ECOまる活動」を2009年より展開しています。当初は、子どもを持つ女性社員が早く退社できるような職場環境をつくることを目的としていた同プロジェクトでした。が、本社の業務改革室や外部コンサルタントを交えた徹底的な生産性の見直しにより、業務の可視化・分析・改善を繰り返し続けることで、BPMを進化させています。より精度の高いBPMフローを構築し、各業務のプロセスが可視化・細分化されたことで、RPA導入へ踏み切り、ヒューマンエラーの撲滅や処理コストの大幅削減を達成しました。また、在宅社員やクラウドワーカーなどと同様に、新たな働き手の一人としてRPAを積極的に取り入れながらそれぞれの働き手の特性に合った業務振分を行っている点も、同社の取り組みの大きな特徴です。効率的に生産性を高めるオペレーションシステムを構築し、働き手の多様化を進める業務改革の一環としてRPAを活用し、大きな効果を挙げている事例と言えます。同社ではロボット開発チームも立ち上げ、人とRPAのハイブリット運用を目指しており、今後もどのような変革が起こるのか注目を集めているロールモデルのひとつです。
BPRとRPAは同時進行で企業を成長させる
国内でも多くの企業がRPA導入を進めている中、局所的な業務効率の向上のみを見据えているケースがまだまだ多く見られます。しかし、RPA導入により大きな効果を生み出すためには、BPRの展開が必要不可欠です。部分的な業務工数やコスト削減だけでなく、全社のすべての企業活動においてRPAを活用していくための土台作りを進めていくことが、これからのBPMにおいては必須の課題と言えるでしょう。
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