「RPA(ロボットソフトウェアを使っての業務フロー自動化技術)」ツールのシェアは増えていく一方であり、コスト面や操作面での選択肢が広がったことから業種や規模に関係なく導入が進んでいます。その中で、RPAは万能ツールであるという誤解も広がってしまっています。
RPAの本質は業務を自動化するソフトウェアの一つに過ぎず、認識を誤ると業務効率化が未達成になりむしろ足を引っ張ってしまう結果につながる可能性もあります。RPA導入を失敗しないためには、先行で導入した企業の失敗事例を教訓として知っておくと安心です。
今回はRPA導入に失敗してしまった企業事例や、導入に失敗しないためにはどうすればよいかのポイントなどを解説していきます。
目次
RPAを導入すれば業務効率化が必ず成功する、は間違い
RPAは上手に利用すれば定型業務が自動化され、今まで負担の掛かっていた従業員は作業から解放されます。そして業務効率化につながるだけでなく従業員の満足度向上や、時間の有効活用による自社収益向上にもつながる可能性があります。
ただし現在では成功事例だけを見て、「とりあえずRPAを導入すれば業務効率化が成功する」というイメージを持ってしまう方もいらっしゃいます。
RPAは、私たちが普段使っている事務ソフトウェアなどの延長線上にあります。そのため結果的にはソフトウェアの一つという位置づけであるにもかかわらず、働き方改革の有効なツールなどとして情報発信された結果過度な期待が発生しがちでした。
実際にはRPA導入に失敗する企業も増え、RPA普及に関して課題を感じた企業がコンサルティングサービスなどを提供している状況です。あなたの企業でも誤ったイメージのままRPAを導入すると、業務効率化に失敗してしまう危険性が高まります。
関連ページ:業務効率化のためにRPAの特性を理解しよう
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RPA導入に失敗してしまった企業の事例
RPA導入に失敗してしまう企業事例には、次のようなものがあります。
・業務プロセスを可視化せずに業務導入し、効果が見込めない
・経営陣と現場に温度差があり、活用ができない
・業務体制が構築されておらず、野良ロボットなどが発生したりする
業務プロセスを可視化せずに業務導入し、効果が見込めない
RPAを実際に業務で活用するには、まず業務プロセスの可視化が必要不可欠になります。誰が、どんな部門と連携して、どんな作業を行っているか作業順番に並べて可視化できるようにすることで、RPAを導入したいという目的づけができるようになります。
アメリカなどRPAの先進国では、RPA導入前から業務プロセスの可視化ができている状態です。結果的にRPA導入もスムーズで、確実に導入後の効果を見込めています。
しかし日本では従来の現場主義が弊害となり、業務プロセスの可視化ができていない企業が数多く存在します。たとえば隣の部門の作業内容を知らない従業員も多いですし、同じ部門間でも属人化により作業内容がブラックボックスになって把握できない状況も発生しています。
そのような状況を放置したままRPAを導入しても、何もよい効果は得られません。RPAには得意な業務と不得意な業務があり、業務を可視化して課題を発見しどのプロセスに導入すれば適切か判断しないと活用ができないからです。
提携作業でも内容が複雑だとロボット開発自体にかなりの時間が掛かってしまいますし、長いプロセスに無理やりRPAを導入してしまうと細かいイレギュラーが発生した際業務全体がストップしてしまう危険性があります。
経営陣と現場に温度差があり、活用ができない
経営陣と現場に温度差があり、現場での活用ができずに失敗に終わってしまうケースもあります。
経営陣は、業務効率化を目指してRPAツールの活用を進めていきます。しかし実際にRPAツールを使うのは、現場の人間です。最終的には現場の人間が納得して積極的にRPAツールが活用される環境を構築しないと、導入した意味がありません。
またRPAツールにより、現場の仕事が奪われると感じる従業員もいます。経営陣からそういった心配について説明がなければ、使いたがらない人員も出てきてしまいます。
現場からヒアリングを行わずRPAツールを説明なしに導入してしまうと、現場でRPAツールが活用されずコストの無駄遣いに終わってしまうかもしれません。
業務体制が構築されておらず、野良ロボットなどが発生したりする
RPAを活用するには、RPAに関する業務体制を構築しておく必要があります。
たとえば現場では複数の従業員がRPAを扱いますが、開発されたロボット管理は責任を持って誰が行うか決めておく必要があります。また現場だけでなく、トラブルが発生した際に的確な対応ができるIT部門との連携も欠かせません。
しかし誰でも扱えるという特性が仇になってしまい、責任者や他部門との連携方法を決めずにRPAツールを使ってしまう企業もあります。
誰でもRPAが作成して使えるような状況だと、予測していない行動を行う野良ロボットの発生率が高まります。野良ロボットはバックグラウンドで勝手に動き、業務全体をストップさせてしまう原因にもなるので注意する必要があります。
またITに疎い人材がRPAツールを作ってしまうと、設計ミスによりロボットが誤作動を起こしてしまう危険性もあります。こういった万が一のトラブルはIT部門が解決しなければなりませんが、現場とうまく連携が取れていないと解決に時間が掛かります。
RPAの導入に失敗しないためのポイント
ここからは、RPA導入に失敗しないためのポイントを解説していきます。
・プロセスを可視化し、最終的に何を達成したいのか明確にする
・現場での導入意義を細かく説明する
・業務体制を構築し、マニュアルなどで作業を平準化する
プロセスを可視化し、最終的に何を達成したいのか明確にする
RPAの導入前には、プロセスを必ず可視化しておきましょう。
規模が大きいと、手作業でプロセスを可視化するのは無理があります。効率よく業務可視化を実現できるよう、業務可視化ツールの導入も検討しましょう。
業務可視化ツールではフローチャート形式で、簡単に作業プロセスと担当者、部門同士の関連性などが把握できます。課題部分の発見や適切な業務プロセスの提案など、サポート機能も充実しています。
また課題を発見してRPAを導入できる部分を把握するだけでなく、最終的に自社が何を達成したいのかも明確にしましょう。
単なる業務効率化だけでなく社員満足度向上や総合的な業務コスト削減など、RPA導入に関してはさまざまな目的があります。各目的に応じて業務プロセスを最適化し、目標を達成できるよう努力しましょう。
現場での導入意義を細かく説明する
経営陣がなし崩しでRPAを現場導入してしまっては、効果は見込めません。必ずヒアリングで業務プロセスの課題をつかんだ後、導入意義を細かく説明しましょう。
自分事としてRPAツール導入を認識してはじめて、現場でRPAツールが導入できる環境を整えられます。導入すると現場にどんなメリットがあるか、また仕事が奪われるかもしれないという心配に関してはこういう解決方法を用意しているなど、現場が納得してRPAツールを導入できるよう説明を怠らないようにしましょう。
業務体制を構築し、マニュアルなどで作業を平準化する
RPAをフル活用できるように、業務体制構築も忘れないようにしましょう。
ロボットを作成する担当や破棄する担当など、RPAツール操作で発生する作業に関して責任者を任命しておくとスムーズに動けます。またIT部門にも現場と連携できるRPAツール担当者を用意しておくなど、現場とIT部門間の関係を密接にしておくことも重要です。
また引き継ぎ後にロボット開発方法が変わったりして困らないよう、マニュアルも用意しておきましょう。マニュアルを用意してRPAツール操作を平準化すると、野良ロボット発生などのトラブルも減少します。
関連ページ:RPA導入 何に気をつければいい?失敗を避けるためのノウハウを公開
まとめ
今回はRPA導入の失敗事例や、導入に失敗しないためのポイントなどを解説しました。
RPAは、万能ツールではありません。業務プロセスを可視化した上でどんな箇所に適用するか見定め、業務体制を整えた上で活用できるよう準備をすることではじめて機能します。
また経営陣が、現場の目線に沿ってツール導入を進める必要もあります。RPAツールを導入して、業務効率化などに失敗しないようにしてください。
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