RPAを使うためには、「シナリオ」を作成する必要があります。映像作品の面白さがシナリオ一つで決まるのと同じように、RPAが有効に使えるかどうかもシナリオによって決まります。
しかし「シナリオの意味は何となく分かるが、具体的にどういった風にできているのかは知らない」という方も多いのではないでしょうか。RPAを導入する際は、シナリオの基本的な仕組みを理解しておくと実際の作成時にも役立ちます。
今回はRPAにおけるシナリオの意味を理解したい方に向け、シナリオとは何かそして実際の作成手順や作成時のポイントなどをご紹介していきます。
目次
RPAで重要な、シナリオとは
シナリオとは、「プログラムをもとにRPAの処理の手順を決めたもの」です。たとえば見積もり書を作成する場合、
1.Excelを立ち上げる
2.シートを開いて、顧客名や値段など必要事項を入力する
3.保存して印刷を行う
といったフローが発生します。
RPAを使う際は各工程をどうやったらプログラム化できるか考えながら、シナリオを作成していきます。多くのRPAツールではシナリオの作成をサポートする機能があり、画面の操作を記録してプログラム化するといった方法でシナリオが簡単に作成できるようになっているので便利です。
RPAにおける、シナリオの作成手順
ここからはRPAでシナリオがどうやって作成されていくか、流れを見ていきます。
1.シナリオの基本を設計する
2.実際にシナリオを作成する
3.テストを行い、不具合がないか確認する
1.シナリオの基本を設計する
まずは、シナリオの基本を設計していきます。
RPAで自動化したい業務のフローを細かく分けて、
・処理をするために必要なデータは何か
・処理の基準は何か
・どういった順番でデータを処理しないといけないか
といった内容をすぐ判断できるようにします。テキストだけでなく、図形も上手く使って内容がすぐ頭に入ってくるようにしましょう。
そして実際にどのフローへ、RPAを導入するか決めます。工程が複数ある業務の場合、全行程へRPAを適用するのが難しい場合も多いです。RPAを自動化すればどのフローに効果があるのか、分かるよう設計図を作りましょう。
またエラーが起きた場合の処理方法を決定するのも、重要なポイントです。
2.実際にシナリオを作成する
シナリオの基本構成作成が終わった後は、実際に構成をもとにシナリオを作成するステップに移行します。RPAツールを起動させて、ノード(シナリオを構成するパーツ)を追加して並べていきます。
ノードには、さまざまな種類があるので使い分けが重要です。操作内容によって、どのノードを使うのが適切か判断しながら作業していきましょう。
シナリオを作成するときは、あいまいな操作内容を作らないこともポイントです。
人間の場合は、あいまいな操作内容でも言葉のニュアンスやその場の状況などに応じて業務処理を行えます。しかしロボットは融通が利かないので、言われた通りにしか処理ができません。あいまいな指示出しがシナリオにあると、誤作動を引き起こす原因にもなります。
「入力欄はAとBの部分を埋める」など、どの部分にどんな処理をすればよいかはっきりシナリオに記載しておきましょう。
ちなみに
・ノード名を分かりやすくする
・シナリオに対し、コメントを付けてなぜ制作したかを理解できるようにする
といった工夫を行うと、誰でもシナリオの内容が分かるので情報の共有がしやすくなって効率的です。
3.テストを行い、不具合がないか確認する
シナリオを制作した後は、不具合がないかテストで確認してみましょう。
テストには、次のような種類があります。
・単体テスト
・結合テスト
・本番のデータを活用したテスト
・データ処理量を増やした耐久テスト
単体テスト
グループといった細かい処理ごとに、シナリオを起動させて様子を見ます。細かい不具合が発生しないよう、この時点でエラーがあった場合は早急に対策しましょう。
結合テスト
シナリオ全体を実行して、繰り返し処理や分岐処理などがエラーなく実行できるか確認していきます。単体だけで処理が上手く行っても、全体で動かすとかみ合わずエラーが出るパターンもあり得ます。
処理に使う変数を書き換えたりといった方法で複数のパターンを試し、例外なく動作が成功するか確認するのもポイントです。
本番のデータを活用したテスト
実際に業務で使うデータを活用して、本番に近い環境の処理テストを行います。実践に最も即しているので、思い掛けないエラーが見つかることもあります。
特別な処理が発生したりしていないか、確認しましょう。
データ処理量を増やした耐久テスト
長時間シナリオをもとにRPAを動かしていると、処理量の問題でエラーが発生する可能性もあります。本番のデータを活用しただけで満足せず、データ処理量をあえて増加させた負荷処理に関するテストも実行しておくと安心です。
業務の繁忙期でどれだけのデータ処理が発生するか確認して、耐久テストに落とし込んでおくと安心です。一番忙しい時期でも、シナリオに沿って止まらずにRPAが稼働するという証明になるでしょう。
単体や結合だけでなく複数のテストを行うことで、実際にエラーが出てトラブルが発生する可能性を少しでも減らせます。面倒くさがらず、時間を多少掛けてでも丁寧に実行しましょう。
ただしシナリオのパターンによっては、すべてのテストを試す必要がない場合もあります。
シナリオを作る上で重要な3つのポイント
シナリオを作成する際は、次の点が重要になってきます。
・最初は、フローの少ない工程のシナリオを作ってみる
・待機時間を作り、処理が失敗しないようにする
・複数の人の意見を参考にして、効率のよいプログラムを組む
最初は、フローの少ない工程のシナリオを作ってみる
シナリオを作る際は、
・Aの条件ではBの処理、Cの条件ではDの処理を行うといった条件分岐をする
・エラーが発生した場合、どうやって回避しながら次の処理を行うか設定を行う
といった作業が発生します。
RPAに慣れていない方が、いきなり工程の多い作業をシナリオ化するには無理があるでしょう。まずは工程の少ない簡単な業務からシナリオを作成して、業務を自動化してみましょう。
RPAにおいて、スモールスタートの観点は重要です。多くの企業ではまず特定の部門からRPA導入をスタートさせ、効果を測定しています。
シナリオ作成においてもスモールスタートを心掛け、簡単なシナリオ作成からシナリオ作りに慣れていくのがポイントです。
待機時間を作り、処理が失敗しないようにする
RPAツールは、シナリオの通りに処理を実行します。内容通りにしか動かないので精密に動きますが、待機する時間を考えないでどんどん次の処理を実行してしまうのがデメリットです。
RPAはソフトウェア内でしかものごとを処理しないので、ハードウェアに掛かる処理が考慮されません。つまりCPUやメモリといったパソコン部品に負荷が掛かり、フリーズしたりする危険性があります。
パソコン部品への負荷を防ぐためには、待機時間を作って安定した処理ができるようにする観点が重要です。待機時間を作る際は時間を指定するのではなく、「画像が画面から消えた時点で次の処理を行う」といったように実際の処理内容を反映させられると効果的です。
複数の人の意見を参考にして、効率のよいプログラムを組む
一人でシナリオを作ろうとすると、プログラム化できず困ってしまう場面もあるかもしれません。また自分の作ったシナリオに非効率な部分があり、処理を最適化できていない場合もあります。
最高のシナリオを構成するためには、複数の人の意見を参考にした方がよいでしょう。自分が思いも見なかったアイデアが浮かび、効率よくシナリオを作成できるようになる可能性があります。
柔軟な発想で、業務に役立つロボットを作成してみてください。
まとめ
今回はシナリオとは何か、そして実際の作成手順や作成のコツなどを解説してきました。
RPAで無駄のない効率的なシナリオを作成できれば、業務にも役立ちます。作成前に構成を行い、誰でもなぜシナリオを作ったのか分かるようにしておきましょう。