将来的に企業が生き残っていくためには、「DX」を成功させる必要があります。DXにより、企業だけでなく社会全体もデジタル基盤へとシフトしていくでしょう。
しかしDXを成功させるにはデジタル化を着実に進めていく必要があります。企業のデジタル化にあたり通過していくであろう段階に、「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の2つがありますが、この2つとDXを混同して考えている方も多いので注意が必要です。
今回はDXに関係する言葉を整理したい方向けに、DXとデジタイゼーション、そしてデジタライゼーションの違いを解説していきます。
目次
デジタル化の第一段階!デジタイゼーションとは
「デジタイゼーション(Digitization)」とは簡単に言えば、「自社のビジネスモデルにデジタル技術を追加して新たな価値を付与する考え」です。業務のプロセスは特に変化させず、あくまでデジタルを既存のビジネスモデルに取り入れて業務の効率化を図ったりという目標を達成していきます。
例としては、
・カメラにインターネット接続機能を付与してクラウド保存を使えるようにする
・CRMツールを導入して既存顧客データ管理を効率化する
・RPAによって一部の業務を自動化する
といったものが挙げられます。
課題となっているのが「デジタイゼーションをDXと勘違いする」方が多いことです。DXでは組織全体もデジタル基盤に変えていく必要があります。つまり企業全体の体質をプロセス含めてデジタル化する必要があり、ビジネスモデルにデジタル技術を一部追加しただけのデジタイゼーションはDXと呼べません。
ただしDXを行う際は、まずデジタイゼーションを最低限クリアしていないと先に進めません。まだデジタル技術をビジネスモデルに取り入れていないという方は、まずはデジタイゼーションの実施から始めてみましょう。
デジタル化の第二段階!デジタライゼーションとは
「デジタライゼーション(Digitalization)」とは「デジタル技術を活用しながらビジネスプロセス自体を変革して、新しいビジネスモデルを実現する考え」を指します。デジタイゼーションとは違いプロセスをデジタル化により効率のよい状態に変化させ、まったく新しい顧客体験を実現していくのがポイントです。
例としては
・インターネットサービスを利用してカーシェアリングサービスを提供する
・ドラマや映画の映像をオンライン上で楽しめるようにする
・SNSによりインターネット上でコミュニケーションが取れるようにする
などが挙げられます。
従来の自動車は自分で購入して所有するのが普通でした。しかし現在では「カーシェアリングサービス」が登場し、自動車を所有するのではなく共有する考えが広まりつつあります。
また従来はドラマや映画などのコンテンツはレンタル店で借りて見る形式が一般的でした。それが「Hulu」といった動画配信サービスの登場により、インターネットで月額料金を払い好きなだけ作品を視聴する方向へ転換しています。
さらに今までは電話や手紙などで家族や友人などとのコミュニケーションを取っていたのが、今ではTwitterといったSNSを使って気軽にリアルタイムでコミュニケーションが取れるようになっています。
このように従来は存在しなかった新たなビジネスモデルをユーザーへ提供できるようにするのが、デジタライゼーションの目的です。
デジタライゼーションが実現すれば、デジタイゼーションよりはDXに近づいています。ただしデジタライゼーション=DXではありません。デジタライゼーションはビジネスモデルの変革だけにとどまりますが、DXではさらに企業にかかわるさまざまな要因を変革していく必要があります。
デジタライゼーションはデジタイゼーションの次にあり、DXの前段階にあるということは覚えておきましょう。
デジタル化の最終段階!DXとは
DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、「Digital Transformation」とも書きます。概念を提唱したのはスウェーデンのウメオ大学の「エリック・ストルターマン」教授です。「ITが社会に浸透すると人々の生活はあらゆる面でよりよい方向に変化する」という意味でDXを定義しました。
DXは各団体や企業などにより、さまざまな意味に解釈されています。経済産業省ではデジタルトランスフォーメーションを「企業がデータやデジタル技術を活用してビジネス環境の激変に対応できるようにする。また顧客や社会のニーズをベースに製品やサービス、ビジネスモデルを変革して業務プロセスや組織、企業文化などを変革して競争上の優位性を確立すること」と定義しており、DXを2025年までに企業が実現しないと2025年以降最大12兆円の経済的損失が日本国内で発生すると伝えているのがポイントです。
DXではデジタライゼーションから一歩進んで、ビジネスモデルのみではなく
・業務の進め方
・組織体制
・企業の社風といった文化
をデジタル基盤で変革していく必要があります。
DXを社内で実現していくためには新しいビジネスモデルの確立だけでなく
・データを活用して新しい製品やサービスなどを提案できるように体制を構築する
・すべての従業員がデジタル技術の活用の必要性について理解し使いこなせるようにする
・ハンコを物理的に押すといった昔ながらの風習を撤廃して、デジタル認証などを導入する
といった取組を進めていく必要があります。
一から組織体制や社風などを変革していくのは大変です。しかしデジタイゼーションやデジタライゼーションを進めていく中でノウハウが蓄積され、DXも実現しやすくなります。
ただしデジタイゼーションやデジタライゼーションだけで満足して改革を終わらせず、次へ次へ改革を進めてデジタル基盤で動く会社作りを行っていくことが重要です。
DXを成功させるためのポイントとは
DXを成功させるには次のようなポイントを押さえておきましょう。
・トップダウンで改革ができるようにする
・デジタルツールを積極的に導入する
・デジタル技術活用を内製化できるようにしておく
トップダウンで改革ができるようにする
DXを進める際は、現場から職がなくなってしまうといった不安が発生して反発が起こる可能性もあります。現場に納得できる理由を説明しつつ、トップダウンで経営陣が積極的にDXを進められるようにしておきましょう。
DXを進める際は、「社内コストを徹底的に削減して柔軟性の高い企業体制を構築したい」といった目的をまず考えておいてください。目的のないDXは方向性がぶれて失敗する可能性が高いです。
デジタルツールを積極的に導入する
デジタルツールを積極的に導入して活用するのはDXの基本です。
・Web会議ツールでリモートワークでもコミュニケーションが取れるようにする
・Web接客で営業担当者の負担を減らす
・チャットボットで24時間365日の問い合わせ体制を構築する
などさまざまなツールがあるので、自社の目的に応じて必要なツールを導入してみてください。
デジタル技術活用をできるだけ内製化できるようにしておく
経済産業省では、「システムを導入する企業側にエンジニアといったITリソースが不足しており、ノウハウが蓄積されないためベンダー側の言うことをうのみにしているのがDXの障害になっている」としています。DXを進めるためには、デジタル技術活用をできるだけ内製化できるようにしておく必要があります。
・ITリソースを新規に雇い入れる
・ベンダーに投げず、自社に必要なシステム要件などを自力で把握できるようにする
・自社でシステム開発ができるようにする
といった取組でDX葉推進されるでしょう。
まとめ
今回はDXとデジタイゼーション、デジタライゼーションの違いを説明しました。
デジタイゼーションが第一段階、デジタライゼーションが第二段階だとすると、DXはその次の第三段階にあります。いきなりDXを進めようとせずにデジタイゼーションやデジタライゼーションから始めて組織体制などを変革できるように準備するのがポイントです。
ぜひ冷静にDXを進めて、柔軟性の高い生き残りを図れる企業作りを行ってみてください。