日本政府は企業の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を実現できるように、さまざまなサポートを行っています。デジタル庁が新設されることで、さらにサポートが拡充されていくでしょう。
現在ではたとえば、「DX推進ガイドライン」を企業に示してDX施策に活用できるようにしてくれています。政府の方針に沿ってDXを進めていけば確実な効果が見込めるので活用しましょう。
今回はDXの実効を検討している企業の方へ向けて、DX推進ガイドラインの内容やポイントなどを詳しく解説していきます。
目次
経営面とシステム面で分かれる!DX推進ガイドラインのポイント
2025年の崖への対策用!DX推進ガイドラインとは
DX推進ガイドラインとは、DXを進める上で企業が気を付けるべき内容を分かりやすくまとめたものです。
DX推進ガイドラインができたきっかけは、経済産業省の発足した研究会で2025年の崖が指摘されたからです。日本企業が2025年までにDXを進めないと毎年最大12兆円の経済損失が発生するとする発表は、政府の考えに大きな影響を与えました。レポートの取りまとめとともにガイドラインの作成が提言され、経済産業省は策定に向けて動き出しています。
そして2018年12月に、経済産業省がガイドラインを取りまとめて発表したのがDX推進ガイドラインです。DX推進ガイドラインはPDFファイルで合計10ページあり(タイトル表紙含む)、
・各企業は競争力の維持や強化のためDXを推進していく必要がある
・デジタル部門を設置するなどの取組が見られるが、ビジネス変革は達成されていない
・DX を実現していく上では経営戦略や企業組織内の仕組み、体制の構築などが必要
といった内容が述べられた後に実際のガイドラインが説明されています。ガイドラインを読むと政府のDXに関する方針も分かるので一度チェックしておきましょう。
経営面とシステム面で分かれる!DX推進ガイドラインのポイント
DX推進ガイドラインでは、ガイドラインを
・DX推進のための経営のあり方、仕組み
・DXを実現する上で基盤となる IT システムの構築
の2カテゴリーから説明しています。
ここからは実際のDX推進ガイドラインを参考に、ガイドラインを理解するためのポイントを解説していきます。
・経営面
・システム面
経営面
システムを構築する前に、まず経営面でDXを推進できる体制を構築しておく必要があります。
まずは経営者がDXに対する経営戦略やビジョンなどを明確にします。
・どの事業で価値を創り出すのか
・どんな価値を新たに創り出すのか
・どのようなビジネスモデルを目的実現のために作成していく必要があるのか
などを定義して社内で公表できるように準備しておくのがポイントです。
DXにおいて現場に丸投げは混乱をもたらす悪い事例です。目的がぶれてDXも進まずコストだけが発生するでしょう。経営陣が目的や実行方法などを明確にすることで、現場も安心してDXを進められるようになります。
また変革を恐れず進む態度を見せられるかもカギです。DXの最終目標はビジネスモデルだけでなく社内文化や風土の変革にも及びます。変革に対して経営者が積極的な姿勢を見せないと、現場のモチベーションも下がります。現場自体がDXに賛成していない場合は、経営者がリーダーシップを取って改革を行っていけるよう導きましょう。
DX推進の際は、現場がスムーズにシステム構築などを進められるように経営陣もサポートを行っていく必要があります。
・仮説検証の繰り返しプロセスを確立しておく
・DX部門を設置するなどして推進体制を構築する
・DXを実現できる人材を育成・確保する予算を用意する
といった取り組みが有効です。
投資の意思決定については、
・コストやビジネスへの影響などを総合的に考える
・結果を求め過ぎない
・DXが実現できないリスクを頭に入れているか
などがポイントになります。
ビジネスモデルの変革によりスピーディーな対応ができる企業を目指していきましょう。
システム面
DX実行に関しては、
・各事業部門におけるデータやデジタル技術の利活用が可能になる基盤
・基盤をを相互に連携できるITシステムの全社構築
が必要となります。
経営戦略を実現するためには必要なデータを活用できるようにしながら、適した IT システムを設計できる体制や人材を確保するのがポイントです。社外との連携が必要になるケースもあるので注意してください。
また全社で稼働するITシステムを構築する際は、
・新システムと既存システムを円滑に連携させる
・部門ごとに最適化されないようにする
・ガバナンスを定めてブラックボックス化するのを回避する
といったポイントをクリアする必要があります。
ベンダー企業に丸投げせず、クライアントとして自社が要件定義やシステムの基盤企画などを行えるように準備しておくことも必要です。海外ではベンダーとクライアントが対等でシステム構築を行うのが当たり前になっています。
事業部門は、DXで実現したい企画を明確にしておきましょう。そしてベンダーから情報を収集して取捨選択し、要件定義を設定してシステム完成に責任を持てるようにしておくのも重要です。要件定義をすべて自社で行えなくても、最低要件の概要は押さえてベンダーといっしょに書類を制作できるようにしておきましょう。
IT資産に関する分析も重要です。
・ビジネスモデルを変革すべき領域を定めて適したシステム環境を構築する
・全社最適で稼働できるシステムになっているか
・競争領域と協調領域を分けて、協調領域については標準パッケージなどを適用する
・必要ないIT システムは廃棄する
・全体の取組が技術的負債の低減につながっているか
といった項目を確認する必要があります。
ITシステムを構築しても結局ブラックボックス化すると、維持に負荷も掛かりますしデータの利活用が制限されるので目的を達成できません。平準化して誰でも使えるようにシステムを構築するには時間が掛かるでしょう。
刷新後の IT システムには、ビジネスモデルの変化に柔軟かつ迅速に対応できる力が必要です。システム稼働後ビジネスが目標通り実行されているかを確認できる評価制度も制作しておきましょう。
DX推進ガイドラインを理解しながらDXを進めよう
DX推進ガイドラインを読んで意味が分からないようであれば、まず内容を読み込んで完全に理解しましょう。ガイドラインの内容が分かっていないということは、DXに対する意義もあいまいだからです。
DX推進ガイドラインを理解した後は、指針として内容を確認しながら目的通りDXが進んでいるか確認してみましょう。経済産業省ではDXが進んでいるかの指標として「デジタル経営改革のための評価指標」を公開しています。
・数値化しにくい定性指標
・数値化できる定量指標
の両方がカテゴリーに分けながら説明されており、グラフで可視化されているので内容が分かりやすいのがポイントです。
実際にDXの達成具合を評価する際に使ってみてください。
まとめ
今回はDXを進めるために参考になる、DX推進ガイドラインの内容やポイントなどを解説しました。
DX推進ガイドラインを理解すれば、経営者と現場で何を気を付けてシステム構築を行えばよいかが分かります。経営陣は変革を恐れず、DXのメリットを現場に説明しながら積極的に改革に参加してみてください。またシステムを構築した後も結果を冷静に分析して、成果が出ているか確認できる仕組みを作りましょう。