企業の事業内容や経営状況を社外にアピールするために、企業のIR活動や広報活動の持つ重要性は近年より一層高まりを見せています。日本でもM&Aが盛んに行われるようになり、企業の資金調達先のグローバル化が加速している中、企業にとってのIR活動はより一層重要性を増しています。
企業の信用性を背負うIR活動への注目が集まる中で、同一視されがちな広報業務との違いを明確にし、IR活動に特化した戦略を構築・実施していくことこそ、今後の企業経営においては、重要なポイントです。
関連ページ:M&Aを成功に導く戦略策定のプロセス
目次
広報は商品の宣伝、IRは株主・投資家への説明を担当
まず、広報とIRの決定的な違いは、ターゲットです。同じ事業内容を社外にアピールするのであっても、広報の相手はマスコミなどのメディアに、一方IRの相手は株主や投資家たちです。そして活動の目的も、広報が商品やサービスを売ることである一方で、IRは現在と未来を見据えた企業の経営能力と体力を明示し、信用(=資金)を得ることを目的としています。
そのため、広報は商品やサービスに関する知識やコミュニケーション能力が必要となってきます。さらに、IR活動はそれらに加え、経営陣の今後の経営戦略や展望、社内の各部門におけるリアルタイムの経営状況や今後の計画など、いわば社内全体の内部情報に通じていなくてはなりません。また、株はもちろんのこと、国内外の動向や法律、それらの情報をスピーディーに得るための語学力や財務・会計に関する知識…と幅広い専門知識を必要とします。
また、広報と同一視されがちなCSRに関しても、企業の社会貢献活動が重視される近年においては、密に連携を取って、株主や投資家にアピールしていく必要があります。
企業経営に深く関わるIR業務は専門家の存在が必要不可欠
IR活動は、株主や投資家への説明対応と、自らの情報発信の2つに分類されます。企業説明会を頻繁に開催し、直接株主や投資家と意見を交わすことは、事業内容や経営戦略を理解し、支援してもらうための重要なコミュニケーションの機会です。また、アニュアルレポートや事業報告書の発行に加え、メルマガなどによるIR情報の定期的な発信なども、新たな投資家を得るために、近年力を入れて取り組まれている分野です。
IR業務は膨大かつ幅広い専門知識やノウハウが必要でありながらも、その重要性に対応できる人材の確保や育成には、大きな時間と負担が伴います。そのため、IR活動をより効率的に強化していきたい場合には、プロへのアウトソーシングを検討する方が近道と言えます。
IRのアウトソーシングには業務代行よりコンサルタント
IRの業務内容は、先に挙げた専門知識はもちろんのこと、社内の機密情報がほとんどを占めています。レポート作成や説明会運営は、スポットの代行業者へ依頼することも可能ですが、情報セキュリティ面と、コスパを考えると、一括してIRを専門とするコンサルタント会社にアウトソーシングすることをおすすめします。
IRを専門としたコンサルティング会社に委託するメリットとしては、戦略に強いところです。知識も経験も豊富なコンサルタントチームにより、現状のIR活動の課題を洗い出し、企業の経営戦略を国内外の流れにどうやって乗せていくかの道筋を明確にしてくれます。
関連ページ:コンサルティングとアウトソーシングの違いとは
委託会社選びには、経験・システム・サービスの3つを比べる
IR専門のコンサルティング会社への委託を検討する際の優先順位は、①経験、②システム、③サービスです。
まず①経験は、コンサルタントはもちろん、会社としての経験です。国内外の株や投資情報に明るく、アナリスト経験もあることは必要です。また委託元企業と同業種の企業へのコンサルティング経験が豊富であれば、機関投資家をはじめ、国内外でのアピール活動もより円滑に行えることが期待できますので、確認しておくと良いでしょう。
②システムは、IR活動の効率化のためには不可欠な存在ですので、どのようなシステムを保有しており、どのようなメリットが生まれるかをしっかり比較しましよう。ひとことでIR情報配信サービスと言っても、相手が個人投資家か機関投資家か、国内か海外か…など、自社に合った相手へと的確に配信できるデータベースと分析機能がなければなりません。また、社内での業務サポートシステムでも、面談履歴管理や投資家のプロフィール管理など様々ですので、社内で使用するシステムは、業務別に管理ツールを導入する必要のない、一元化されたシステムを提供してくれるところが良いでしょう。
最後に③サービスは、実際に代行して行ってもらえる業務です。実際に専門のコンサルタントが来て、戦略を立て、システムを導入してくれても、様々な業務を行う人は変わらず自社社員では、負担が大きいですよね。そのためにも、報告書の作成や情報配信、問い合わせ対応や説明会の準備・運営など、実際に部内で発生する業務をどこまで請け負ってくれるのかも、確認しておきましょう。システムとの連動によって人の手による業務工数が激減するようなら、自社社員に任せても良いでしょうから、自社の活動規模や担当社員数、コストなどとすり合わせながら、委託する業務を選定していくと良いでしょう。
インターネットの普及により、説明会の動画配信などで海外投資家とも円滑にコミュニケーションが取れるようになったことも、IR業務が拡大している原因のひとつでもあるのです。ITを駆使した、より効率的なグローバルIR活動戦略が必要とされていることは、言うまでもありません。
時代の流れに合わせた戦略のもと、より多くの株主や投資家の賛同を得る企業アピールのためにも、海外での株・投資のアナリスト経験が豊富な専門家の力を上手く借りながら、効果的なIR活動を進めていきましょう。
おすすめ関連記事:M&Aにより売り手と買い手が得られるメリットとは?
おすすめ関連記事:個人向けのM&A案件を見つける方法とは?