日本国内におけるM&A件数は増加の一途を辿っており、2018年には3850件、金額にして29兆8,802億円と、件数・金額ともに過去最高を記録しています。そのうちの約7割が国内企業間でのM&A案件となっており、多くの企業がM&Aを経営戦略の重要な一環として捉えていることがわかりますね。
多くの経営者がM&Aを選ぶ背景には様々なメリットが存在します。今回は、M&Aによってもたらされるメリットを、売り手・買い手の双方向から解説していきます。
目次
M&Aによる売り手側のメリットは「企業再生」か「幸せなリタイア」
M&Aによる買い手側のメリットは「スピーディーで効率的な経営戦略の実行」
M&Aによる売り手側のメリットは「企業再生」か「幸せなリタイア」
M&Aにおける近年のトレンドとして、「ノンコア事業のカーブアウト」や「事業継承」が挙げられます。前者は、採算の合わない事業や重要性の低い事業を売却することで経営のスリム化を図り、売却資金をコア事業の成長・拡大のために投入することを目的とするケースが増加したことが背景にあります。一方後者は、人材不足と高齢化により事業継承が難しいと判断した経営者が、他者へ事業譲渡というかたちで従業員や設備も含めて引き継ぐケースが増加したことが増加の一因にあると考えられるでしょう。これら2点をふまえ、売り手側のメリットは以下のようなものが挙げられます。
・競争力強化
集中すべき業務を取捨選択することで、その企業が本来得意とする分野、収益の上がる事業に経営資源を集中させることができます。
・企業基盤強化
大手企業の傘下に入った場合、豊富な経営資源や販路を得られることや、金融機関からの資金調達が行いやすくなります。また、給与・福利厚生などの従業員の処遇においても、M&A後の方が向上するケースが多く、従業員が高い満足度で仕事ができるようになります。
・創業者利益の獲得
M&Aによる会社売却により、経営者は多額の現金を得ることができます。そのため、借入金返済にあてる、早期リタイアでセカンドライフを楽しむ、または新たな会社を立ち上げるなど、様々な用途で使用することができます。
・事業承継問題の解決
後継者がおらず、M&Aによって第3者に会社を売却することで、煩雑な引き継ぎなどの手間を最小限に抑えながらも、大切な会社を存続させていくことができます。M&Aの場合、その多くが売り手側の希望価格に合った、友好的な企業へ売却されるケースが多いため、安く叩かれて売られるリスクは少ないと言えます。
M&Aによる買い手側のメリットは「スピーディーで効率的な経営戦略の実行」
M&Aによる企業や事業の買収が行われる際、買収側の目的となることは、「事業規模の拡大」や「事業の多角化」「コスト削減」が多く挙げられます。その背景には、国内での競争が激化する一方で、新たな活路として海外進出の必要性が高まり、尚且つ世界規模で顧客のニーズは多様化・複雑化していることから、スピーディーな経営への重要性が高まっていることがあるのです。
・短期間での競争優位性の構築
買収した企業のノウハウや技術・販路や特許など、様々な強みを一気に得ることができる点は、買い手側にとっては最大のメリットといえます。ソフト面だけでなく、設備や各拠点の施設など、ハード面においても、一から構築していくコストや手間を負うことなく、経営に活用していくことができるため、戦略遂行もスピーディーに進めることができます。
・規模の経済性
M&Aにより、買い手側は事業規模の拡大が可能となります。買収した企業が保有していた生産ラインや販売網をそのまま活用できるため、低コストで商品やサービスを提供できるようになります。短期間で一気に他社との差をつくることができるため、市場シェアにおいても確固たる地位を獲得することが可能となるのです。
・新規事業参入
買収した企業のノウハウや設備を活かすことで、シナジー効果が生まれ、既存のサービスや商品を多角的に展開していくことが可能となります。既存事業をさらに強化していくための、関連性のある新規事業をローコストかつスピーディーにスタートさせることができる点も、買い手側にとっては大きなメリットです。
国内市場の縮小によりM&Aはさらに加速していく
人口減少に伴い、国内市場の縮小が進む中、M&Aは売り手側・買い手側双方にとって、重要な経営戦略のひとつとなっています。これまで様々な規模で点在していたノウハウや技術力を集約しながらの競争力強化が、喫緊の課題である一方で、もはや弱みやリスクは抱えていられないという厳しい状況にあることも、M&A増加を強く後押ししています。今後もM&Aによって企業集約が一層進むことが予想されており、大手企業幹部に限らず、M&Aの効果をより身近に実感する機会が増えていくことでしょう。
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